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心の理論、そしてサリー・アンの課題について、名古屋の児童精神科医が解説
心の理論、そしてサリー・アンの課題について、名古屋の児童精神科医が解説
こんにちは、医療法人永朋会 和光医院、児童精神科医の加藤晃司です。
今回は、心の理論、そしてサリー・アンの課題について解説します。
心の理論という言葉、お聞きになったことあるでしょうか。
児童精神科医になってまだ間もないころ、心の理論について教えてもらったことを覚えています。
松本英夫教授みずからの講義だったはずです。
その講義の中で、心の理論が何なのかを説明するための有名な話として、サリー・アンの課題のことがでました。
割と分かりやすいので、まずはサリー・アンの課題について以下に記載します。
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サリー・アンの課題(Sally-Anne task)は、心の理論の発達を評価するために使用される有名な認知心理学の実験です。この課題は特に、子供が他者が自分と異なる信念を持っていることを理解できるかどうかを評価するために用いられます。この実験は1985年に心理学者のサイモン・バロン=コーエン、アラン・レスリー、ウタ・フリスによって初めて紹介されました。
サリー・アンの課題の進行
実験は通常、以下のように進行します:
ストーリーの提示: 実験参加者に対して、サリーとアンという二人のキャラクターが含まれる短いストーリーまたは人形劇が提示されます。サリーがボールを持っており、それをバスケットに入れて部屋を出ます。
重要な出来事: サリーが部屋を出た後、アンがボールを取り出し、それを異なる場所、例えば箱に移動します。
質問: サリーが部屋に戻ってきた時、彼女はボールをどこで探し始めるでしょうか?
正しい答えとその意味
正しい答えは「バスケット」です。なぜならサリーはアンがボールを移動させたことを見ていないからです。この質問に正しく答えることができれば、子供は他者が自分とは異なる信念を持っていることを理解できていると考えられます。これは心の理論の一部として「偽信念課題」(false belief task)として知られており、4歳頃までに多くの子供がこの能力を獲得するとされています。
サリー・アンの課題と自閉症
サリー・アンの課題は自閉症スペクトラム障害(ASD)のある子供の研究にも用いられています。多くのASDのある子供はこの課題を解くのに苦労し、これは彼らが心の理論、特に他者の偽信念を理解するのが難しいことを示唆しています。これはASDのある人々が社会的コミュニケーションや相互作用に困難を抱える一因とされています。しかし、すべてのASDのある人が心の理論の障害を抱えているわけではなく、この能力は個人差が大きいです。
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どうでしたでしょうか?
サリーと、アンという外国の名前という以外は、割と分かりやすいですよね。
自分と他人は異なる存在であり、他人の気持ちになって想像したり、例え話が分かったり、そのような能力を、心の理論といいます。
これは4歳くらいに通過すると言われていますが、ASDの子だと程度によって、それが遅くなります。
ここで、心の理論がどのように定義されているか、一度おさらいしましょう。
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心の理論(Theory of Mind)は、他者の感情、意図、信念や欲望などの内的な状態を理解し、それに基づいてその人の行動を予測する能力を指します。この能力は、社会的な相互作用やコミュニケーションにおいて非常に重要です。
心の理論を持っているということは、他者が自分と異なる視点や感情を持っていることを理解し、それを考慮に入れて相互作用することができるということを意味します。これにより、人は他者の行動や言動の背後にある動機を推測し、適切な社会的応答を行うことができます。
心の理論の発達
心の理論は幼児期に始まり、幼少期を通じて徐々に発達していきます。初期の心の理論の発達には以下のような段階があります:
意図の理解: 他者が意図を持って行動していることを理解します(約1歳頃)。
欲望の理解: 他者が欲望を持っていること、そしてその欲望が行動に影響を与えることを理解します(約2歳頃)。
信念の理解: 他者が自分とは異なる信念を持っていることを理解し、それが行動に影響を与えることを理解します(約4歳頃)。
心の理論の重要性
心の理論は以下のようなさまざまな社会的スキルや能力に関連しています:
共感: 他者の感情を理解し、共感する能力。
コミュニケーション: 他者の視点を理解し、適切な方法で情報を伝える能力。
友情の形成と維持: 他者の感情や欲望を考慮に入れ、友好的な関係を築く能力。
紛争解決: 他者の立場を理解し、紛争を解決するための妥協点を見つける能力。
心の理論の障害
心の理論の障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、統合失調症など、さまざまな発達障害や精神疾患と関連しています。これらの障害を持つ人々は、他者の内的な状態を正確に理解するのが難しく、社会的相互作用やコミュニケーションに困難を経験することがあります。
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まとめ
心の理論、そしてサリー・アンの課題について解説しました。
心の理論の障害があるのか、それがどの程度であるかを、児童精神科では生育歴を聞きながら、見極めていきます。
心の理論の障害が強いほど、ASDの中核症状である対人相互性の障害は強くなります。
それによって、どの程度の治療的、療育歴アプローチが必要か、判断していきます。
このあたりはDSMなどの標準的な診断基準には書いていません。
しかし非常に重要なことです。
心の理論の障害の程度が強いほど、コミュニケーションの質的な障害はもちろん強くなります。
将来の予測をするめためには、幼児期の生育歴の詳細な情報が必要です。
医療法人永朋会 理事長
加藤晃司
当院ホームページはこちらより https://wako-psy-clinic.com
医療法人永朋会 和光医院
児童精神科・精神科・心療内科
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