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小児統合失調症への薬物療法を開始するタイミングについて、名古屋の児童精神科医が解説。
小児統合失調症への薬物療法を開始するタイミングについて、名古屋の児童精神科医が解説。
こんにちは、名古屋市千種区 児童精神科専門クリニック、医療法人永朋会 和光医院、加藤晃司です。
今回は、小児統合失調症への薬物療法を開始するタイミングについて解説します。
まずは一般論としては以下のように言われています。
小児統合失調症に対する発症前の薬物療法の有効性に関しては、慎重なアプローチが必要です。以下に、このトピックに関する主要なポイントをまとめます。
発症前のリスク評価
高リスク状態の識別: 小児や青年期に統合失調症を発症する可能性が高い個体を識別することは難しく、診断は通常、症状が顕著になった後に行われます。
症状のモニタリング: 発症前の段階では、症状のモニタリングと評価が重要です。これには、非特異的な精神症状や機能の低下が含まれる場合があります。
薬物療法の利用
薬物療法の限界: 発症前の段階での薬物療法の利用は、通常推奨されません。これは、統合失調症を特定する明確なバイオマーカーや予測指標が存在しないためです。
副作用のリスク: 抗精神病薬を含む薬物療法は副作用が伴う可能性があり、特に発達途中の子供や青年においては慎重な検討が必要です。
代替的アプローチ
早期介入プログラム: 症状がまだ軽度の場合には、サポートプログラムや心理社会的介入が有効です。これには、家族療法、認知行動療法、教育支援などが含まれます。
生活習慣の改善: 健康的な生活習慣、適切な栄養、定期的な運動、ストレス管理の技術なども、全体的な精神健康を支える上で重要です。
結論
小児期や青年期における統合失調症の発症前段階での薬物療法の導入は、一般的には推奨されていません。代わりに、早期の識別、心理社会的支援、健康的な生活習慣の促進が重視されます。症状が発現した場合は、専門医の指導のもとで適切な治療計画を立てることが重要です。また、薬物療法の可能性を検討する際は、副作用と利益のバランスを十分に評価する必要があります。
つまり、基本としては、統合失調症の診断基準を満たすまでは薬物療法はしない、ということです。
ですが、統合失調症とはそもろも一つの疾患として分類可能なのか、ということもあります。
薬剤の臨床試験は、DSMないしはICDなど、なんらかの国際的に標準化された診断基準を使って、診断がついた人を対象として行われます。
しかし最近では統合失調症スペクトラムという考え方がでてくるくらい、同一疾患にすべて入るのか、という疑問はあります。
もちろん科学的なエビデンスを軽視するつもりはないですが、あきらかに統合失調症の中核症状である自我漏洩症状が出現しているのに、その他の項目が満たされないから薬物療法は開始しない、というのは私は間違っていると思います。
実際に統合失調症の早期症状しかでていない群を対象した臨床試験で有効性を認めている論文もあります。
だから私は自我漏洩症状を認め、日常生活に支障をきたしている、この状態が薬物療法を開始するタイミングだと考えています。
中核症状である自我漏洩症状が認めれえるかどうか、ここが判断のポイントになるはずです。
まとめ
小児統合失調症への薬物療法を開始するタイミングについて解説しました。
このテーマは、まだ学会でも結論がでていないものです。
ですが、私の意見も児童精神の臨床家からみたら、一つの早期治療のタイミングとなるのではないかと思っています。
診断基準は、グローバルで臨床試験をやるためにはどうしても必要ですし、横断的な診断が意味を持つのも分かります。
しかし病態とは診断基準の項目で決まるものではありません。
精神病圏だと判断したら、そのタイミング薬物療法を行うのを考えるのは必要なことだと思います。
医療法人永朋会 理事長
加藤晃司
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児童精神科・精神科・心療内科
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