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小児期の注意欠如・多動性障害(attention-deficit/hyperactivity disorder;ADHD)の治療について
今回は、「小児期の注意欠如・多動性障害(attention-deficit/hyperactivity disorder;ADHD)の治療について」です。
子どものADHDにおける対応
1.ADHDにおける対応と治療
治療の目標
彼らはさまざまな理由により医療機関を受診することになります。個々のケースによって異なりますが,ADHDの中核症状の根治は現段階では望めないため,患者がADHDを持ちながらも,それによって生じる本人や家族の困難さが日常生活上少しでも軽減されることが治療の主たる目標になります。
心理・社会的治療
現時点で使用可能な薬物によって,個人差はあるものの不注意や衝動性を中心とした症状や,二次的に生じている抑うつなどの症状が多少なりとも改善することにより,患者の日常生活に対して間接的に良好な影響がある可能性は考えられます。しかし,ADHDの治療には薬物療法だけではなく,同時に心理・社会的治療を併用することが重要です。
まず小児期に受診するADHDに対して治療上もっとも重要なことは,本人,家族に対して病態に関する正確な知識を伝えることです。ADHDの子どもは,幼少期からのADHDの症状により失敗体験を繰り返しており自己評価が著しく低い状態で受診することが多いと思われます。本人と家族から生育歴を振り返る作業を通じて,これまでの失敗体験の多くがADHD症状により引き起こされていたことを本人と家族が理解することができることが重要です。そしてその上で,患者の生活場面で必要とされるスキル(もの忘れへの対処,片付けの方法,スケジュール管理,優先順位の付け方,苛立つ場面での怒りの転化方法,集中力の持続のための工夫など)の獲得に対する援助が必要となります。
薬物療法
ADHDに対する薬物療法として,本邦では2007年にmethylphenidateの徐放錠,2009年にatomoxetine、2017年にGuanfacine Hydrochlorideが承認されています。3剤ともに国内におけるプラセボ対照二重盲検比較試験において有効性と安全性が示されています。
子どものADHDへの対応としてもっとも重要なことは,まず彼らの持つADHD自体の適切な診断ですが,同時に背景に存在する生育歴を理解する必要があります。子どものADHDの生育歴には特徴があり,それを踏まえた上で診断,治療を行う必要があります。もちろん心理・社会的アプローチだけでなくADHDに対する薬物療法は,ADHDの中核症状を改善したり,他の合併する精神疾患を治療するのに重要な選択肢の一つであると思います。このようにADHDの疾患特性を理解したうえで本人,家族,教師へのアプローチを含めた包括的な介入が必要であると思います。
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