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子どもの不安障害について②
今回は「子どもの不安障害について②」です。
子どもの不安障害の治療
子どもの不安障害の治療ガイドラインでは,多面的で包括的な治療が推奨されており,そのなかには心理教育,認知行動療法,学校コンサルテーション,家族療法,力動的精神療法,薬物療法,などが含まれています。しかし子どもの不安障害の治療では,力動的精神療法や家族療法に関するエビデンスはなく,認知行動療法が最も推奨されている治療法です。一方,薬物療法のエビデンスは蓄積されつつあり,子どもの不安障害の短期的な治療において選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitors: SSRI)の有効性が証明されています。SSRIは中等度から重度の不安障害に対して有効であり,不安障害によって心理療法に参加することができないとき,あるいは心理療法が部分的な効果しか得られないことがあるときに,薬物療法が有効であると考えられています。
- 心理療法
子どもの不安障害についてもっとも研究されている心理療法は認知行動療法(cognitive-behavioral therapy: CBT)です。CBTは認知,行動,情動の3つの要素から構成されており,不安を持続させる非現実的な思考や予測,あるいは結果的に不安を惹起する状況を避けるような不適切な行動,を治療の標的にしています。典型的なCBTでは子どもと家族に対して心理教育を行います。心理教育では不安が発生した場合の認知,身体症状,行動について理解を深め,その上で身体症状のコントロールの仕方(深呼吸,リラクゼーショントレーニング)について教育します。さらに,恐怖の対象に対する誤った認知を修正し,不安を惹起する対象への暴露を経験させます。欧米ではいくつものマニュアル化されたCBTが開発されています。
一方,心理療法は確かに不安に対してある程度の効果を発揮するものの,いくつかの問題点も指摘されています。すなわち,子どもの不安障害は臨床家に認識されていないことが多く,そのために治療に関しても広く知られてはいません。さらに治療にはコストと時間がかかり,CBTを行うことができる治療者も限られており,すべての子どもがCBTに反応するわけではありません。
- 薬物療法
最近の子どもの不安障害に対する薬物療法の研究では,子どもの不安障害におけるSSRIの有効性を証明するエビデンスが報告されています。しかし薬物療法はCBTが利用できないときや,効果が不十分であるような場合に導入するべきです。現在のところ,本邦において不安障害の子どもを対象にした臨床試験に基づいて承認されている薬剤はありません。しかし,副作用の少なさや,効果とリスクの比を考えるとSSRIは臨床的に第一選択として考えられています。SSRIを使用するときには当然,単剤が原則であるが,CBTとの併用が効果的であるといわれています。
子どもの不安障害に対して薬物療法を行う場合は,副作用やその他の可能性のあるリスクを考慮することが重要であります。すなわち,子どもの不安障害に対する臨床試験でSSRIに関連する副作用としては,胃腸障害(腹痛,下痢),頭痛,不眠,activation syndromeなどが認められています。さらに子どもの不安障害や大うつ病性障害に対するSSRIの影響を調査した最近の報告では,SSRIの服用が自殺のリスクを増加させることに関連しているとされています。子どものなかにはこのような有害事象のために治療が中断することもあり得ます。そのため,これらの副作用について心理教育を行うことは重要なことであり,薬物療法を開始する場合には両親に子どもの反応を注意して観察するように指示するべきだと思います。
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