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児童期から思春期にかけての強迫性障害(Obsessive–compulsive disorder:OCD)について
今回は児童期から思春期にかけての強迫性障害(Obsessive–compulsive disorder:OCD)についてのご説明です。
強迫性障害は、ちょうど学童期、ピークは中学生くらいに生じる可能性が高い疾患です。
本人は強迫観念については意識していないことが多く、早期に見つけるのが困難なことがあります。
つまり、小児の場合には症状である自動思考が自分の思考と混ざってしまって、なかなか症状(自分の考えではない)と分けることが難しいからです。
しかし日常生活への影響は大きく、強迫観念がじゃまで授業に集中できなかったり、自宅での生活に支障がでることがあります。
以下は私が小児OCDの論文中で書いた文章です。
簡単にまとめると、小児OCDの症状は大人の場合とは症状の出現の仕方が異なる場合があります。病院を受診する時の主訴が強迫症状ではなくても、その背景に隠れている可能性があります。
逆に、主訴が強迫症状であっても、それは統合失調症の前駆症状であったり、広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:PDD)のこだわりである可能性があり、診断には詳細な問診が必要となります。
治療はエビデンスがあるのは、認知行動療法(Cognitive behavioral therapy:CBT)と薬物療法ですが、子どもへのCBTは大人と比較するとまだ日本ではエビデンスが少ないです。
現実的には,日常臨床の中で、CBTの要素を取り入れながら、適切な薬物療法を行うのがバランスの良い治療だと考えます。
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1.小児OCDの症状について
小児の強迫症状はさまざまな病態で出現する。強迫症状は正常発達の過程でも認められ,OCDスペクトラムといわれている強迫性障害,摂食障害,身体醜形障害,離人症性障害,トゥレット障害,抜毛症でも出現する。飯田は小児OCDの強迫症状の臨床的特徴として,①症状行為に母親や周囲の人を巻き込む傾向があり,家庭内暴力に至ることが少なくない,②強迫症状が必ずしも自我親和的でないことがある,③症状がある範囲に限られていて,それ以外の場所では症状が出現しない場合がある,④患児にとって「嫌い」と「汚い」はしばしば同義語であり,「嫌い」を「汚い」と表現している場合がある,⑤思春期患者では自分のうちに沸き起こる性的欲求に対する罪悪感が関係している場合がある,⑥症状が固定せず動揺し,増悪すると統合失調症が顕在化する場合がある,と報告している。
2.小児OCDの鑑別について
小児OCDは特に広汎性発達障害,統合失調症との鑑別が必要である。まず広汎性発達障害との鑑別については,広沢らが広汎性発達障害の「こだわり」と強迫症状との相違について報告した。「こだわり」は,①当症状に対する不合理な感覚ないし自我異和性が目立たず,症状に対する抵抗性や回避行動があまり認められない,②強迫症状に対する不快な感情が存在しないことが多い,③不安が目立たない,④随意性(反復される思考や行動が,自分のそれであるという認識)が目立ちにくいという特徴があり,「こだわり」と強迫症状を比較すると,反復性と内容の一貫性においては一致するが,その他に関してはむしろ相違の方が大きいとしている。
次に統合失調症との鑑別についてまとめる。強迫症状それ自体は,幼少期から比較的一般的にみられる神経症的特徴であり,統合失調症との特異的関係を示唆するものではない。その一方,児童思春期の場合は統合失調症の前駆症状であることが多いとも報告されているため注意が必要である。強迫性障害の診断基準(DSM-Ⅳ-TR)では「この障害の経過のある時点で,その人は,その強迫観念または強迫行為が過剰である,または不合理であると認識したことがある」,「これは子どもには適応されない」と記載されている。特に小児では言語化や概念化ができないため,OCDと統合失調症を強迫症状の特徴のみで鑑別するのはさらに困難である。強迫症状の定義が拡大されたため,OCDと統合失調症を自我親和性や自我異和性のみでの鑑別をすることは困難である。このため強迫症状に加え日常生活あるいは面接時の状態像を把握して鑑別を進めていくことが必要になる。
ーーーー引用終了ーーーー
<引用文献>
加藤晃司, 安藤英祐, 松本英夫. Sertralineにより治療されていた小児の強迫性障害がaripiprazoleのaugmentationにより改善した1症例.精神科治療学.2009; 24(2): 227-235.
記事作成:加藤晃司(医療法人永朋会)
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