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視線恐怖とは?原因・症状・学校での対策を和光医院(名古屋市千種区・児童精神科)が詳しく解説
視線恐怖とは?原因・症状・学校での対策を和光医院(名古屋市千種区・児童精神科)が詳しく解説
「人から見られていると思うと体が固まる」「授業中に目線が気になって集中できない」「自分の視線が人に迷惑をかけている気がする」「教室に入れない・人がいる場所に行けない」——このような症状を抱えているお子さんはいませんか?視線恐怖は思春期の子ども・青年に多く見られる状態で、適切な理解と支援があれば改善できます。名古屋市千種区の児童精神科専門クリニック・和光医院が、視線恐怖の原因・症状・診断・治療・学校での具体的な対策まで、保護者・本人・学校の先生にわかりやすく詳しく解説します。
目次
- 視線恐怖とは何か
- 視線恐怖の2つのタイプ——「見られる恐怖」と「見てしまう恐怖」
- 視線恐怖はなぜ起こるのか(原因・背景)
- 視線恐怖の症状——精神・身体・行動の3つの側面
- 視線恐怖と関連する精神疾患・状態
- 視線恐怖の診断基準(社交不安症との関係)
- 視線恐怖と間違えやすい状態
- 子どもの視線恐怖の特徴——大人との違い
- 視線恐怖が学校生活に与える影響
- 【学校での対策①】本人ができる具体的な方法
- 【学校での対策②】保護者ができるサポート
- 【学校での対策③】学校・先生に求める配慮
- 【学校での対策④】段階的な登校支援の組み立て方
- 治療法の基本方針
- 【治療①】認知行動療法(CBT)・曝露療法
- 【治療②】薬物療法
- 【治療③】その他の心理療法・支援
- 回復の経過と予後
- よくある質問(FAQ)
- 和光医院での診療について
1. 視線恐怖とは何か
**視線恐怖(しせんきょうふ)とは、他者の視線に対して強い恐怖・不安・苦痛を感じる状態を指す言葉です。英語ではScopophobia(スコポフォビア)**とも呼ばれます。
日常的な言葉で言えば「人の目が気になる」という体験ですが、病的な視線恐怖ではその恐れが日常生活・学校生活に著しい支障をきたすレベルに達しています。
視線恐怖は日本独自の文化的文脈で特に注目されてきた概念で、日本の精神医学では古くから「対人恐怖症」の中核症状のひとつとして研究されてきました。
視線恐怖の広がり
「少し人の目が気になる」という程度であれば多くの人が経験します。しかし病的な視線恐怖では以下のような状態に至ります。
- 人がいる場所に入ることができない
- 誰かに見られていると思うだけで体が動かなくなる
- 教室・電車・人混みを避けるようになる
- 不登校・ひきこもりにつながる
2. 視線恐怖の2つのタイプ——「見られる恐怖」と「見てしまう恐怖」
視線恐怖には2つの異なるタイプがあり、それぞれ体験の性質・苦しさが異なります。
タイプA:「見られること」への恐怖(他者から見られる恐怖)
「自分が他者から見られて、否定的に評価されるのではないか」という恐れです。
具体的な体験:
- 「クラスのみんなが自分のことを見ている気がする」
- 「授業中に先生に当てられたら、みんなに変だと思われる」
- 「廊下を歩くと後ろから笑われている気がする」
- 「自分の顔・表情・外見が他人に不快感を与えている気がする」
- 「みんなの前で恥ずかしいことをしてしまいそうで怖い」
これはDSM-5(米国精神医学会の診断基準)における**社交不安症(Social Anxiety Disorder:SAD)**の中核的な症状に相当します。
タイプB:「見てしまうこと」への恐怖(自己視線恐怖)
「自分の視線が他者を傷つけている・不快にさせているのではないか」という恐れです。日本ではこのタイプを**「自己視線恐怖」**と呼ぶことがあります。
具体的な体験:
- 「自分が人を見てしまうことで、相手が不快に感じているかもしれない」
- 「自分の目線のせいで周囲の人に迷惑をかけているかもしれない」
- 「どこを見ればいいかわからず、視線の置き場がない」
- 「相手の目を見てはいけない・見ると傷つけると思う」
- 「自分の視線を制御できずに困っている」
このタイプは他者への害を恐れる加害恐怖の側面を持ち、強迫症(OCD)的な要素を含むこともあります。
両タイプが混在することも多い
実際には「見られることも怖い・見ることも怖い」という形で両タイプが混在するケースが多く、「視線そのものが恐怖の対象」という共通した苦しさを持ちます。
3. 視線恐怖はなぜ起こるのか(原因・背景)
視線恐怖の原因は一つではなく、複数の要因が絡み合って生じます。
気質・生物学的要因
行動抑制気質(Behavioral Inhibition) 見知らぬ人・新しい状況に対して強い抑制・回避を示す気質で、社交不安症・視線恐怖の最も強い予測因子のひとつです。この気質は遺伝的背景が強く、幼少期から見られます。
扁桃体の過剰反応 扁桃体(脳の恐怖・感情処理に関わる部位)が他者の視線・顔の表情に対して過剰に反応することが、脳神経科学的な研究で示されています。
セロトニン・ノルアドレナリン系の関与 不安・恐怖の神経生物学的基盤として、セロトニン系・ノルアドレナリン系の機能異常が示されています。
心理的・認知的要因
否定的な自己評価 「自分は他者から否定的に見られている」「自分の外見・言動は人を不快にさせる」という認知の偏り(自動思考)が視線恐怖の核心にあります。
完璧主義・失敗への過敏さ 「絶対に恥ずかしいことをしてはいけない」「完璧に振る舞わなければ評価されない」という思考パターンが不安を増幅させます。
注意の自己集中(Self-Focused Attention) 社会的場面で「自分がどう見られているか」に注意が過度に集中し、外部情報(実際の相手の反応)よりも内部の不安・身体感覚に意識が向くことで恐怖が強まります。
環境・経験的要因
いじめ・からかい体験 「変な目で見るな」「あなたの視線が気持ち悪い」という言葉や、外見・言動に関するいじめ体験が視線恐怖のきっかけになることがあります。
羞恥体験・恥ずかしい経験 人前での失敗・恥ずかしい経験(授業中の失敗・発表での笑われ体験など)が、「また同じことが起きるかも」という予期不安として定着します。
過保護・過干渉な養育環境 社会的場面から過剰に守られてきた場合、対人場面でのコーピングスキル(対処する力)が育たず、視線恐怖が生じやすくなることがあります。
ソーシャルメディア・外見への過剰な意識 SNSの普及・外見への過剰な注目が、自分がどう見られるかへの意識を過度に高めることがあります。
発達特性との関連
ASD(自閉スペクトラム症) ASDでは視線の処理・目線の合わせ方・社会的場面の読み取りが困難なことがあり、「視線をどう扱えばいいかわからない」という形で視線恐怖が生じやすいです。
ADHD(注意欠如多動症) ADHDの衝動性から「相手を無遠慮に見てしまった」という体験が積み重なり、「自分の視線は人を傷つける」という自己視線恐怖につながることがあります。
4. 視線恐怖の症状——精神・身体・行動の3つの側面
精神・認知症状
- 「みんなが自分を見て笑っている」という強い確信・思い込み
- 「自分の視線が相手を不快にしている」という侵入的な思考
- 「どこを見ればいいかわからない」という混乱・困惑
- 「ここにいては迷惑だ」という存在感の否定
- 自分の顔・表情・目線が「変に見える」という強い気にしすぎ
- 授業・会話に集中できない(視線のことで頭がいっぱい)
- 「また変に見られた」という事後の反芻(ぐるぐると思い返す)
身体症状
- 顔が赤くなる(赤面)
- 心臓がドキドキする(動悸)
- 汗が出る・手足が震える
- 声が震える・言葉が出なくなる
- 体が固まる・動けなくなる
- 吐き気・腹痛・頭痛
- 「自分の目がおかしくなった」という感覚(離人感)
行動症状(回避行動)
- 人の多い場所を避ける(教室・廊下・食堂)
- 他の人の目を見ないようにする・うつむく
- 人がいる場所ではマスク・帽子・前髪で顔を隠す
- 教室に入れない・席に座れない
- 発表・音読・グループ活動を拒否する
- 登校を拒否する・不登校になる
- 外出できなくなる
5. 視線恐怖と関連する精神疾患・状態
視線恐怖は単独の疾患名ではなく、以下の精神疾患・状態の症状として現れます。
社交不安症(SAD:Social Anxiety Disorder)
視線恐怖の最も多い背景疾患です。「他者から否定的に評価されることへの強い恐れ」を核心とし、視線恐怖はその中核症状のひとつです。
対人恐怖症(日本の文化関連症候群)
日本の精神医学で長く研究されてきた概念で、「他者に不快感・迷惑を与えることへの恐れ」を特徴とします。視線恐怖(「醜貌恐怖」「自己視線恐怖」「自臭恐怖」等を含む)はその代表的症状です。
強迫症(OCD)
「視線で相手を傷つける」という侵入的思考(強迫観念)と、それを打ち消すための確認行動・回避行動(強迫行為)が見られる場合、OCDとしての評価が必要です。
ASD(自閉スペクトラム症)
ASDの特性として、目線の扱い方・視線の調整が困難なことがあり、「どこを見ればいいかわからない」という形で視線恐怖と混同されることがあります。
醜形恐怖症(BDD:Body Dysmorphic Disorder)
自分の外見の欠点(実際には小さいか存在しない)に過度に囚われる疾患で、「自分の顔・目が変で人に不快感を与える」という形で視線恐怖と重なることがあります。
うつ病・抑うつ状態
抑うつ状態では「自分は価値がない・人から嫌われている」という認知の歪みが生じ、視線への過敏さが増すことがあります。
6. 視線恐怖の診断基準(社交不安症との関係)
DSM-5における社交不安症の診断基準(視線恐怖に最も関連する)は以下の通りです。
A) 他者から注視される可能性のある社会的状況に対する著しい恐怖・不安
B) 否定的に評価されるような行動・不安症状を呈することを恐れる
C) 社会的状況がほぼ常に恐怖・不安を引き起こす
D) 社会的状況を回避するか、強い恐怖・不安を抱えながら耐える
E) 恐怖・不安が実際の脅威に不釣り合いに強い
F) 恐怖・回避・不安が6ヶ月以上持続する
G) 社会的・職業的・学業的機能に著しい苦痛・支障をもたらす
子どもの場合、この恐怖は大人との場面だけでなく、同年代の子どもとの場面でも生じることが必要です。
7. 視線恐怖と間違えやすい状態
正常な恥ずかしがり屋・内気
誰でも人前で緊張することはあります。視線恐怖との違いは、日常生活・学校生活・友人関係への著しい支障があるかどうかです。「人前で少し緊張する」程度であれば正常な範囲です。
ASDの視線の困難
ASDの「アイコンタクトが苦手」「どこを見ればいいかわからない」という困難は、視線恐怖と外見上似ていますが、「他者の評価への恐れ」が主体ではなく「社会的な視線の使い方がわからない」という点が異なります。ただし両者は共存することも多いです。
注意欠如(ADHD)による視線の問題
ADHDでは「ぼーっとして視線が定まらない」「衝動的に人を見てしまう」ことがありますが、これは評価への恐れではなく注意の調整困難が原因です。
チック症(眼のチック)
まばたき・目を動かすチック症は、視線に関する症状として混同されることがありますが、チックは意志とは無関係な不随意運動であり、「見られること・見ることへの恐れ」とは異なります。
8. 子どもの視線恐怖の特徴——大人との違い
言語化が難しい
子どもは「視線恐怖」という言葉を使わず、「学校に行きたくない」「お腹が痛い」「教室に入れない」という形で間接的に症状が現れます。
回避行動が目立つ
子どもの視線恐怖は、泣く・かんしゃくを起こす・固まる・逃げ出すなどの行動として現れやすく、「問題行動」と誤解されることがあります。
身体症状が前景に出る
腹痛・頭痛・吐き気・発熱などの身体症状が登校前に現れることが多く、内科・小児科での検査で「異常なし」となった後に精神医学的評価が行われることがあります。
発達段階との関係
幼児期:見知らぬ人への恐れは正常発達の一部ですが、持続・強度が問題になります。 学童期:友達の輪への参加、発表、目線の問題として現れやすいです。 思春期:自意識の高まりとともに視線恐怖が最も顕著になりやすい時期です。
9. 視線恐怖が学校生活に与える影響
視線恐怖は学校生活のあらゆる場面に影響します。
授業中の困難
- 先生や友達の視線が気になって授業に集中できない
- 指名・音読・発表への強い恐怖
- 前の席・中央の席に座れない(見られやすいと感じる)
- 班活動・グループ学習に参加できない
移動・休み時間の困難
- 廊下・階段・食堂で人の視線が気になる
- 休み時間に教室を出られない
- 体育・着替えへの強い不安
人間関係の困難
- 友達と目を合わせられない・話しかけられない
- 「変な人と思われているかも」という思い込みから関係が避けられない
- グループに加われない・ひとりでいる
登校への影響
- 登校前の腹痛・頭痛・吐き気
- 学校の玄関・教室の前で足が止まる
- 不登校・長期欠席
10. 【学校での対策①】本人ができる具体的な方法
グラウンディング技法
視線が気になり始めたとき、「今ここ」の現実感に戻るための技法です。
5-4-3-2-1技法: 見えるもの5つ・触れるもの4つ・聞こえるもの3つ・臭いが感じられるもの2つ・味わえるもの1つを心の中で数えます。注意を視線への不安から感覚へ切り替えることで、恐怖の強度が下がります。
腹式呼吸: 鼻から4秒吸い・7秒止め・口から8秒かけてゆっくり吐く(4-7-8呼吸)を繰り返します。交感神経の興奮を静める効果があります。
視線の「安全な置き場所」を見つける
「人の顔を見なければいけない」という思い込みを手放し、相手の口元・ネクタイ・眉毛の間・肩など**「顔の中で比較的楽に見られる場所」**を決めておくと実践しやすくなります。
認知の修正——「みんな自分を見ていない」を確かめる
「みんなが自分を見ている」という思い込みに対して、「本当に全員が見ているか」を冷静に確認してみます。実際には多くの場合、他の人は自分のことをそれほど気にしていません(スポットライト効果:自分が思うほど他者は自分に注目していない、という心理現象)。
段階的な挑戦(小さな成功体験を積む)
回避を続けると恐怖は強くなります。「少しだけ挑戦する」を繰り返すことで恐怖が和らいでいきます。
例:
- まず廊下を歩けた→次は教室の入口まで行けた→次は着席できた
- まず1人の友達と目が合えた→2人になった→グループでも大丈夫になった
「100点の挑戦」ではなく「60点の挑戦」を繰り返すことがコツです。
自分の「視線パターン」を観察する
どんな場面で・どれくらいの強さで・どんな思考とともに視線恐怖が起きるかを日記・メモに記録します。パターンが見えると「いつもこの場面で強くなる」という予測ができ、対処が楽になります。
11. 【学校での対策②】保護者ができるサポート
「行きなさい」より「一緒に考えよう」
「学校に行きなさい」「そんなこと気にしなくていい」という言葉は逆効果です。本人は気にしたくても気にしてしまう苦しさを抱えています。**「どんな場面が一番つらい?」「どうなったら少し楽になりそう?」**という対話を大切にしてください。
家が安心できる場所であること
学校での恐怖・緊張を抱えて帰宅する子どもにとって、家が安心できる場所であることが回復の土台です。学校の話を無理に聞き出すのではなく、「今日も頑張ったね」という言葉と安心できる空間を用意しましょう。
身体症状を「仮病」と決めつけない
登校前の腹痛・頭痛は、「学校が嫌だから」という気持ちと「本物の身体症状」が同時に存在しています。「仮病でしょ」と言うことは子どもの苦しさを否定することになります。
学校との連携を取る
保護者が学校(担任・スクールカウンセラー・養護教諭)に視線恐怖の症状・本人の困りごとを正確に伝えることが、適切な配慮につながります。医療機関の診断書・情報提供書を活用してください。
専門機関への相談を早める
視線恐怖が3ヶ月以上続き、学校生活に著しい支障が出ている場合は、早めに児童精神科・心療内科に相談してください。早期介入が回復を早めます。
12. 【学校での対策③】学校・先生に求める配慮
絶対に必要な配慮
指名・音読・発表の配慮 突然の指名は視線恐怖の子どもに強いパニックを引き起こします。事前に「今日は〇〇に答えてもらうよ」と予告する、または発表を免除する配慮が重要です。
席の配慮 「後ろの席・端の席が楽」と感じる子どもが多いです。本人の意向を聞いて席の調整を行ってください。
クラスメートへの説明 「からかわない・見つめない」ことをクラス全体に指導してください。ただし、個人情報の観点から詳細を開示するかどうかは本人・保護者と相談して決めてください。
逃げ場の確保 視線恐怖が強くなったときに避難できる場所(保健室・相談室・図書室)を確保し、「つらくなったら行っていい」と伝えておきます。
段階的な参加を認める
「全部できるか・できないか」ではなく、「今日はここまで参加できた」という小さな成功を認める柔軟な評価が重要です。
例:
- 教室の入口まで来られた→それを認める
- 朝の時間だけ参加できた→それを評価する
- 給食だけ一緒に食べられた→進歩として認める
スクールカウンセラーとの連携
スクールカウンセラーが本人・保護者・担任の橋渡し役として関わることで、学校全体での支援体制が整います。医療機関との情報共有も重要です。
13. 【学校での対策④】段階的な登校支援の組み立て方
視線恐怖による不登校・登校困難には、段階的な登校支援(スモールステップ)が有効です。
フェーズ1:安全基地の確立(家での安心) まず家が安全・安心な場所であることを確認します。外出・登校の前段階として、生活リズムの安定を図ります。
フェーズ2:学校との接触(物理的な距離を縮める) 登校時間外(放課後)に校内を訪問する・校門まで行く・保健室に顔を出すなど、「学校という場所への慣れ」から始めます。
フェーズ3:部分的な参加(時間・場所を限定) 午前中だけ・特定の授業だけ・別室(保健室・相談室)での学習など、部分的な参加から始めます。
フェーズ4:段階的な教室復帰 好きな授業→苦手でない授業→全授業という順で段階的に参加範囲を広げていきます。
フェーズ5:通常登校への移行 焦らず、「1歩進んで2歩戻る」ことがあっても正常なプロセスとして受け入れながら、継続的に支援します。
重要なポイント: 各フェーズで無理に次へ進めようとしないこと。「今日できた」を認めながら、本人のペースで進むことが最も重要です。
14. 治療法の基本方針
視線恐怖の治療は、背景にある疾患・症状の重さ・本人の希望によって選択します。
軽症〜中等症: 心理療法(CBT・曝露療法)を中心に、環境調整・学校との連携を並行して行います。
中等症〜重症: 心理療法に加えて薬物療法(SSRI等)を組み合わせます。
重症・難治例: 専門的な集中的CBT・集中外来プログラム・入院治療を検討します。
15. 【治療①】認知行動療法(CBT)・曝露療法
認知行動療法(CBT)
CBT(Cognitive Behavioral Therapy)は視線恐怖・社交不安症に最も科学的根拠(エビデンス)が確立された心理療法です。
認知再構成: 「みんなが自分を見ている」「視線で相手を傷つけている」という思考の歪みを検討し、より現実的・バランスのとれた思考に修正します。
行動実験: 「本当にみんなが自分を見ているか」を実際の場面で確かめる実験を行います。思い込みと現実のギャップに気づくことで恐怖が和らいでいきます。
注意訓練(Attention Training): 自己集中(自分の不安に注意が向いている状態)を外部(周囲の状況)に向け直すトレーニングです。
曝露療法(Exposure Therapy)
恐怖を感じる場面にあえて段階的に直面することで、「怖い場面でも大丈夫」という経験を積み重ねる治療法です。
例(段階的曝露の例):
- 信頼できる人と1対1で目を合わせる練習
- 少人数のグループで会話する
- 店員さんに声をかける
- クラスで一言発言する
- 発表・音読に参加する
最初から最も怖い場面に挑戦するのではなく、「少し怖いけど何とかできそう」な場面から始めて成功体験を積むことが重要です。
ビデオフィードバック
「自分がどう見えているか」を実際に映像で確認することで、「思ったほど変に見えていない」という現実認識を促す技法です。視線恐怖・社交不安症に特に有効です。
16. 【治療②】薬物療法
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
社交不安症に対して最もエビデンスが確立された薬物療法です。フルボキサミン・エスシタロプラム・パロキセチン・セルトラリンなどが使用されます。
効果が出るまで4〜8週間かかります。継続服用が重要で、効果が出た後も一定期間(通常1〜2年)継続することが推奨されます。
子どもへの使用: 用量に慎重な調整が必要です。服用開始初期に不安・焦燥感が一時的に増加することがあり、注意深いモニタリングが必要です。
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
デュロキセチン・ベンラファキシンなどが社交不安症に有効とされています。
β遮断薬
プロプラノロールなどのβ遮断薬は、発表・試験などの特定の場面での動悸・手の震え・声の震えなどの身体症状を一時的に抑える目的で使用されることがあります(保険外使用の場合あり)。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬
即効性がありますが、依存性・認知機能への影響のため、子どもへの長期使用は避けます。急性期の短期使用に限ります。
17. 【治療③】その他の心理療法・支援
マインドフルネス
「今この瞬間に意識を向ける」マインドフルネス訓練は、視線への反芻(ぐるぐる考え続けること)・予期不安(また変に思われるかも)を軽減するのに役立ちます。
社会スキルトレーニング(SST)
対人場面での適切な振る舞い・会話・目線の使い方を練習するグループトレーニングです。ASDが背景にある視線恐怖に特に有効です。
アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)
「不安を完全になくす」ことを目指すのではなく、「不安があってもやりたいことをする」という価値ベースの行動を促す療法で、難治な視線恐怖にも有効性が示されています。
家族療法・保護者への心理教育
視線恐怖は家族の関わり方が症状の維持・回復に大きく影響します。保護者への心理教育・家族全体へのアプローチが重要です。
18. 回復の経過と予後
視線恐怖・社交不安症の予後
適切な治療を受けた場合、多くの方で症状の改善・日常生活の回復が期待できます。特に思春期・青年期で発症した場合、早期介入により良好な回復が期待できます。
回復に時間がかかる要因:
- 重症で長期間放置した場合
- ASD・強迫症など複数の疾患が重なっている場合
- 家庭・学校環境のサポートが不十分な場合
「波」がある回復プロセスを理解する
視線恐怖の回復は直線的ではなく、「良くなったと思ったらまた戻った」という波を繰り返しながら徐々に改善していきます。「後退した」ことを失敗と捉えず、**「波の中での長期的な改善」**を目標にしてください。
19. よくある質問(FAQ)
Q. 視線恐怖は何科を受診すればよいですか?
A. 児童精神科・思春期精神科・心療内科・精神科が適切な相談先です。子どもの場合は児童精神科が最も適切です。「視線恐怖」という言葉を使わなくても、「人の目が気になって学校に行けない」という状態を伝えていただければ評価できます。
Q. 「人の目が気になる」のは性格ですか?病気ですか?
A. 「少し気になる」程度は正常な範囲です。しかし、学校に行けない・授業に参加できない・友達を作れない・ひきこもっているという程度であれば、社交不安症として治療対象になります。「性格だから仕方ない」と放置せず、早めに専門家に相談してください。
Q. 「自分の視線が人を不快にさせている」という思いが止まりません。
A. その体験は自己視線恐怖と呼ばれ、強迫症的な側面を持つことがあります。「本当にそうか」を一人で考え続けても苦しくなるだけです。CBT(認知行動療法)や必要に応じた薬物療法で改善できますので、まずは専門家に相談してください。
Q. 視線恐怖とASDはどう違いますか?
A. ASDでは「視線の使い方がわからない・目線が定まらない」という特性がありますが、「他者の評価への恐れ」が主体ではないことが視線恐怖との違いです。ただし、ASDと社交不安症(視線恐怖)は約50〜80%の頻度で併存するとされており、両方を同時に評価・治療することが重要です。
Q. 親が「視線なんか気にしなくていい」と言っていますが効果がありますか?
A. 残念ながら「気にしなくていい」という言葉だけでは改善しません。視線恐怖は意志でコントロールできるものではなく、神経生物学的な基盤と認知の偏りが関与しています。「気にしないように」と言われるほど余計に気になるという悪循環が生じることもあります。専門的な治療と適切な関わりが必要です。
Q. 不登校になっています。まず何をすればいいですか?
A. 焦って学校に戻すことよりも、①本人の安心できる環境を確保する②児童精神科・心療内科に相談する③学校(スクールカウンセラー)と連携する——この3つを同時に進めることをお勧めします。和光医院では、本人が来られない場合でも保護者だけでの相談から始めることができます。
20. 和光医院での診療について
名古屋市千種区にある和光医院は、児童精神科を専門とするクリニックです。視線恐怖・社交不安症・対人恐怖・不登校に関する専門的な診断と治療を行っています。
当院が大切にしていること
「人の目が怖い」「教室に入れない」——その苦しさをそのまま受け止めることから始めます。焦らず、本人のペースで、安全に治療を進めることを大切にしています。
当院での対応内容
- 視線恐怖・社交不安症・対人恐怖の診断・評価
- ASD・ADHD・OCD・うつ病など併存疾患の評価
- 認知行動療法(CBT)・曝露療法
- 薬物療法(SSRI・SNRIなど)
- 保護者・家族への心理教育・カウンセリング
- 学校・スクールカウンセラーとの連携支援
- 不登校支援・段階的登校プランの立案
こんな方はぜひご相談ください
- 人の目が気になって授業に集中できない
- 教室に入れない・学校に行けない
- 「自分の視線が人を不快にさせている」という思いが止まらない
- 発表・音読・グループ活動が恐怖で参加できない
- ASDがあり視線の使い方に困っている
- 視線恐怖で友達が作れない・対人関係が辛い
- どこに相談すればいいかわからない
本人が受診できない場合でも、まず保護者だけでの相談から始めることができます。「もしかして視線恐怖かも」と思ったら、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
- 視線恐怖には「見られることへの恐怖(社交不安)」と「見てしまうことへの恐怖(自己視線恐怖)」の2タイプがあります
- 原因は気質・脳の神経回路・認知の歪み・いじめ体験・発達特性など複数の要因が絡み合っています
- 子どもの視線恐怖は「腹痛・頭痛・登校拒否」として現れやすく、言語化が難しいです
- 学校では発表の免除・席の配慮・逃げ場の確保・段階的参加の認容が重要な対策です
- 治療の第一選択は認知行動療法(CBT)・曝露療法で、重症例には薬物療法(SSRI)を組み合わせます
- 「人の目が気になる」を「性格」と放置せず、早めに児童精神科に相談することが回復への近道です
- 本人が受診できなくても、保護者だけの相談から始めることができます
和光医院(名古屋市千種区)児童精神科専門クリニック お問い合わせ・ご予約はお電話またはウェブ予約にて承っております。
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子どものためのメンタルクリニック
医療法人永朋会 和光医院
診療科目
児童精神科・精神科・心療内科
発達障害(ASD・ADHD)、不登校、起立性調節障害、不安症、パニック症、チック症、強迫症、うつ症状など、お子さまから成人の方まで幅広く診療しております。
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【診療時間】
午前 9:00〜13:00
午後 15:00〜18:00
土曜 9:00〜14:00
【休診日】 日・祝日
患者様へのご案内
- 明細書について:当院では、療養費規則に基づき明細書の発行を無料で行っています。
- 一般名による処方について:後発医薬品が存在する場合は、商品名ではなく一般名(有効成分名)で処方することがあります。
- 医療情報の活用について:当院では、安心な医療を提供する為、オンライン資格確認や電子処方箋データ等の情報を活用して診療を行っています。