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2026.07.12ブログ

スマホ・ゲーム依存とは?自宅での対策と治療法を和光医院(名古屋市千種区・児童精神科)が詳しく解説

スマホ・ゲーム依存とは?自宅での対策と治療法を和光医院(名古屋市千種区・児童精神科)が詳しく解説

「一日中スマホを手放せない」「ゲームをやめなさいと言うと激しく怒る」「夜中まで動画を見て朝起きられない」「スマホを取り上げたら暴れた」——このような状況に悩む保護者の方は非常に多くなっています。スマホ・ゲーム依存は、意志の弱さや育て方の問題ではなく、脳の報酬回路が関与する医学的な問題です。名古屋市千種区の児童精神科専門クリニック・和光医院が、スマホ・ゲーム依存の原因・診断・自宅での対策・治療法について、保護者の方にわかりやすく詳しく解説します。


目次

  1. スマホ・ゲーム依存とは何か
  2. なぜスマホ・ゲームに依存するのか(脳科学的なメカニズム)
  3. スマホ・ゲーム依存のサインチェックリスト
  4. WHO・ICD-11における「ゲーム障害」の診断基準
  5. スマホ・ゲーム依存と関連する精神疾患・発達特性
  6. スマホ・ゲーム依存が子どもに与える影響
  7. 【自宅での対策①】家族のルールづくりの基本
  8. 【自宅での対策②】環境整備——使いにくくする工夫
  9. 【自宅での対策③】会話・コミュニケーションのとり方
  10. 【自宅での対策④】代替活動・居場所の確保
  11. 【自宅での対策⑤】ペアレンタルコントロールの活用
  12. 「スマホを取り上げる」は正解か?
  13. 不登校・ひきこもりとスマホ・ゲーム依存の関係
  14. 治療の基本方針
  15. 【治療①】動機づけ面接・家族支援
  16. 【治療②】認知行動療法(CBT)
  17. 【治療③】薬物療法
  18. 【治療④】入院・集中プログラム
  19. 回復の経過と予後
  20. よくある質問(FAQ)
  21. 和光医院での診療について

1. スマホ・ゲーム依存とは何か

スマホ依存・ゲーム依存とは、スマートフォン・ゲームの使用を自分でコントロールできなくなり、使用が日常生活・学校生活・家族関係に著しい支障をきたしている状態です。

2019年にWHO(世界保健機関)が**ゲーム障害(Gaming Disorder)**をICD-11(国際疾病分類第11版)に正式に収載したことで、医学的な疾患概念として世界的に認識されるようになりました。

スマホ・ゲーム依存の現状

日本では厚生労働省の研究(2021年)により、中学生の約6.5%・高校生の約9.4%がインターネット依存傾向にあると推定されています。スマートフォンの普及・SNS・動画サービス・オンラインゲームの発展に伴い、依存リスクは年々高まっています。

「好き」「はまっている」との違い

ゲーム・スマホが好きなことと「依存」の違いは**「コントロールできているかどうか」**です。

  • 好き・はまっている:やめようと思えばやめられる。勉強・食事・睡眠・友人関係が保てている
  • 依存:やめたいのにやめられない。生活全体が使用を中心に回っている。使えないと強い不安・怒りが出る

2. なぜスマホ・ゲームに依存するのか(脳科学的なメカニズム)

スマホ・ゲーム依存は「意志が弱い」「育て方が悪い」のではなく、脳の報酬回路(ドーパミン系)が関与する神経生物学的な問題です。

ドーパミン報酬回路の関与

ゲーム・SNS・動画は、「もう少しやれば報酬が得られる」という予測不能な報酬(スロットマシンと同じ原理:可変比率強化スケジュール)を提供します。この予期→報酬のサイクルがドーパミン(快楽・意欲のホルモン)の大量放出を引き起こし、脳の報酬系を強く刺激します。

繰り返すうちに脳が「ゲーム・スマホ=最大の報酬」と学習し、他の活動(食事・友人・勉強)からは快感を得にくくなります。これがスマホ・ゲーム依存の神経生物学的な本質です。

前頭前野の機能低下

前頭前野は「やめよう」「後で考えよう」という衝動制御・実行機能を担う脳の部位です。長期的な過剰使用により前頭前野の機能が低下し、**「やめたくてもやめられない」**状態が固定化します。

子どもが特に依存しやすい理由

前頭前野は25歳頃まで発達途上にあります。そのため、衝動制御が未熟な子ども・思春期の若者は、大人よりはるかに依存しやすい脳の状態にあります。「子どもは自分でコントロールできる」という前提自体が、脳科学的には誤りなのです。

SNS・動画が特に依存を引き起こす仕組み

  • 無限スクロール: 終わりがなく、次のコンテンツへの誘惑が続く
  • いいね・通知: 社会的承認への欲求を刺激する即時フィードバック
  • おすすめアルゴリズム: 見続けるほど「自分好みのコンテンツ」を提示し続ける
  • FOMO(見逃す恐怖): 「今見ないと乗り遅れる」という不安を煽る設計

これらはすべて依存を引き起こすように設計されたUI/UXであり、子どもが抵抗するのは非常に難しいのです。


3. スマホ・ゲーム依存のサインチェックリスト

以下の項目に複数当てはまる場合、スマホ・ゲーム依存が疑われます。

使用のコントロール

  • □ 「もう終わりにする」と言ってもやめられない
  • □ 決めた時間より大幅に長く使い続ける
  • □ やめようとすると強い不快感・怒りが出る

生活への影響

  • □ 夜中まで使用して睡眠不足が続いている
  • □ 朝起きられない・学校に遅刻・欠席が増えた
  • □ 食事・入浴・会話などの日常生活が後回しになる
  • □ 学業成績が著明に低下した

心理・感情面

  • □ スマホ・ゲームができないと極度に不安・イライラする
  • □ スマホ・ゲーム以外のことに興味・喜びがなくなってきた
  • □ 「どうせゲームしかできない」という自己否定感がある
  • □ 気分が落ち込んでいる・元気がない

対人・家族関係

  • □ スマホ・ゲームのことで家族と毎日けんかになる
  • □ 注意すると激しく怒る・暴言・暴力が出る
  • □ 友達と直接会わなくなり・オンラインでしか交流しない
  • □ 嘘をついて使用時間を隠す

3つ以上当てはまる場合は、専門家への相談をお勧めします。


4. WHO・ICD-11における「ゲーム障害」の診断基準

WHOのICD-11(2019年)では、**ゲーム障害(Gaming Disorder)**を以下の基準で定義しています。

A)ゲームのコントロール障害 開始・頻度・持続時間・終了・環境のコントロールができない

B)ゲームを他の生活上の関心事・日常活動より優先させる ゲームが生活の中心になり、他のことが後回しになる

C)ゲームによる問題にもかかわらず継続・拡大する 学業・仕事・健康・家族関係への悪影響があっても続ける

D)症状が個人・家族・社会・学業・職業において著しい苦痛または機能障害をもたらす

E)少なくとも12ヶ月以上の持続(症状が重篤な場合は期間が短くても診断可能)


5. スマホ・ゲーム依存と関連する精神疾患・発達特性

スマホ・ゲーム依存は、以下の精神疾患・発達特性と高い頻度で関連します。正確な評価が重要です。

ADHD(注意欠如多動症)

ADHDの衝動性・注意の移りやすさ・退屈への低耐性は、即時報酬を与えるゲーム・SNSと非常に相性が良く、ADHDを持つ子どもはゲーム依存になりやすいとされています。ADHDのスクリーニングがスマホ・ゲーム依存の評価において特に重要です。

ASD(自閉スペクトラム症)

社会的なコミュニケーションの困難・感覚過敏・こだわりの強さを持つASDの子どもは、対人関係のストレスが少ないゲーム・インターネットの世界に強く惹きつけられることがあります。ゲームへの強いこだわりがASDの特性として現れることもあります。

うつ病・抑うつ状態

抑うつ・意欲低下・孤立感がゲーム・SNS依存のきっかけとなることがあります。また、逆に長期の依存がうつ状態を引き起こすこともあります(双方向の関係)。

不安症・社交不安症

対人場面での不安が強い子どもが、安全に感じるオンラインの世界に逃避する形でゲーム・SNS依存に至ることがあります。

睡眠障害

夜間のスマホ・ゲーム使用が睡眠リズムを乱し、慢性的な睡眠不足・概日リズム睡眠障害(昼夜逆転)につながります。


6. スマホ・ゲーム依存が子どもに与える影響

睡眠への影響

スクリーンから発せられるブルーライトはメラトニン(睡眠ホルモン)の分泌を抑制し、寝つきを悪くします。深夜まで使用することで慢性的な睡眠不足が生じ、朝起きられない・日中の眠気・集中力低下・感情の不安定さにつながります。

学習・認知機能への影響

慢性的な過剰使用は前頭前野の発達・機能に悪影響を与え、注意力・記憶力・問題解決能力・衝動制御の低下につながるとする研究があります。

身体的影響

  • 眼への影響: 近視の進行・眼精疲労・ドライアイ
  • 姿勢の問題: 首・肩のこり・ストレートネック
  • 運動不足: 生活習慣病リスクの上昇

心理・社会的影響

  • 直接的な対人交流の減少・コミュニケーションスキルの低下
  • 現実の人間関係への興味・意欲の低下
  • 自己評価の低下・達成感の消失(現実での成功体験が減る)
  • ゲーム内での課金による経済的問題

7. 【自宅での対策①】家族のルールづくりの基本

最重要原則——「禁止・没収」ではなく「一緒に決める」

スマホ・ゲーム依存への最も多い誤った対応は、突然の禁止・没収です。これは一時的な問題解決にならず、むしろ関係悪化・反抗・暴力につながるリスクがあります。

効果的なルールの条件:

①本人も参加して決める 「親が一方的に決めたルール」は守られません。「一緒にルールを考えよう」という姿勢が重要です。本人が納得した上で合意形成することが、継続的なルール遵守につながります。

②具体的で測定可能なルールにする 「使いすぎない」ではなく「1日2時間まで・22時以降は使わない」という具体的な基準が必要です。

③例外と見直しのタイミングを決める 「長期休みは少し長くする」「テスト前は減らす」など、状況に応じた柔軟性も大切です。また「1ヶ月後に見直す」という期限を設けることで、継続的な対話が可能になります。

④親も守る(モデリングの重要性) 「親はスマホを使いながら子どもだけ禁止」は最も逆効果です。家族全員で食事中のスマホ禁止・就寝前の使用禁止などを実践することが信頼性を高めます。

ルールの具体例

  • 就寝1〜2時間前からスマホ・ゲームなし(睡眠の質向上)
  • 食事中・家族の会話中はスマホを別の部屋に置く
  • 宿題・入浴・夕食後に使用開始(順番を決める)
  • 週に1日「デジタルオフデー」を設ける
  • スマホの充電場所はリビング(寝室への持ち込み禁止)

8. 【自宅での対策②】環境整備——使いにくくする工夫

依存の対策で最も効果的なのは「意志力に頼る」のではなく、**「使いにくい環境を作る」**ことです。

物理的な環境整備

寝室へのスマホ持ち込み禁止 就寝前・深夜のスマホ使用は最も問題が大きいです。充電器をリビング・廊下に固定し、夜間のスマホはリビングに置くルールを徹底してください。

ルーターのタイマー設定 Wi-Fiルーターに時間制限(タイマー機能)を設定し、設定した時間以降はインターネット接続を切断します。機器に依存せず物理的に接続を遮断できるため効果的です。

ゲーム機・スマホの置き場所を共用スペースに 自室での使用より、家族の目が届く共用スペース(リビング)での使用を原則にすることで、使用時間・内容の管理が容易になります。

デジタル的な環境整備

スクリーンタイム機能・ペアレンタルコントロールの詳細は次章で解説します。


9. 【自宅での対策③】会話・コミュニケーションのとり方

してはいけない関わり方

❌「またゲームしてる!」という否定・批判 批判・非難はゲームへの防御的な執着を強め、親子関係を悪化させます。

❌「ゲームばっかりして将来どうするの」という脅し・将来の不安を煽る言葉 感情的な脅しは一時的な効果しかなく、長期的には反発を招きます。

❌ 突然スイッチを切る・コントローラーを取り上げる オンラインゲームの途中での強制終了は、チームへの迷惑・データ消失など本人にとって非常な苦痛をもたらし、強い怒り・暴力のきっかけになります。

効果的なコミュニケーション

✅ 終了の5分前予告 「あと5分で終わりにしてね」という予告を与えることで、「今のゲームを区切りよく終わらせる」準備ができます。突然の終了要求より格段に受け入れられやすいです。

✅ ゲームの内容に興味を持つ 「何のゲームやってるの?」「どんなキャラクターがいるの?」という問いかけは、子どもの世界への関心を示し、信頼関係の構築につながります。ゲームを「敵」ではなく「子どもの大切なもの」として接することが、話し合いの土台になります。

✅「ゲームをやめろ」ではなく「〇〇が終わったらゲームしよう」 ゲームを完全に奪うのではなく、優先順位の順番を変えるアプローチ(「宿題が終わったら1時間ゲームしよう」)の方が協力を得やすいです。

✅ 問題行動ではなく感情に注目する 「なぜゲームばかりするのか」という表面の行動より、「ゲームのどんなところが楽しい?」「ゲームをしているときどんな気持ち?」という内面への問いかけが、背景にある問題(孤独感・不安・承認欲求)の発見につながります。


10. 【自宅での対策④】代替活動・居場所の確保

スマホ・ゲームは「退屈・孤独・ストレス」からの逃避手段でもあります。単純に使用を制限するだけでは空白が生まれ、ますます依存が強まります。「スマホの代わりになる楽しみ・居場所・つながり」を作ることが不可欠です。

代替活動を一緒に探す

  • 本人が「少し興味あるかも」と言ったことを一緒に試してみる
  • スポーツ・音楽・料理・絵・工作など、身体を動かす・手を使う活動
  • 地域の部活・習い事・放課後等デイサービス
  • 家族での外出・旅行・公園

重要: 子どもが「やらされている」と感じる活動は続きません。本人が選択できる余地を残してください。

人とのつながりを増やす

孤独感・居場所のなさが依存の背景にある場合、リアルでの安心できるつながりを増やすことが根本的な対策になります。友人との外出・家族との会話・地域活動への参加など、スマホの外での「つながり」を育てることが重要です。


11. 【自宅での対策⑤】ペアレンタルコントロールの活用

スクリーンタイム(iOS・iPadOS)

  • 設定 → スクリーンタイム → アプリ使用時間の制限
  • ゲームカテゴリ・SNSカテゴリごとに使用時間を設定できる
  • パスコードを設定することで子どもが制限を解除できなくなる
  • 「休止時間」: 設定した時間帯にはあらかじめ許可したアプリ以外使用不可

ファミリーリンク(Android/Google)

  • Google ファミリーリンクアプリから保護者が子どものデバイスを管理
  • アプリのダウンロード承認・使用時間の制限・位置情報の確認が可能
  • 「おやすみ時間」を設定して特定時間帯に端末をロック

Nintendo Switch・PlayStation などゲーム機

  • Nintendo Switch:「みまもりSwitch」アプリで使用時間・コンテンツ制限
  • PlayStation:「ファミリー管理」機能で使用時間・課金制限

ペアレンタルコントロールの注意点

技術的な制限は重要ですが、それだけでは不十分です。子どもが「監視されている」と感じると信頼関係を損ないます。「安全のためにみんなで決めたルールの一部」として透明性を持って導入することが重要です。また技術に詳しい子どもは制限を回避することもあるため、対話による信頼関係構築が本質的な対策です。


12. 「スマホを取り上げる」は正解か?

突然の全面禁止・没収の問題点

スマホ・ゲーム依存への対応として最もよく行われるのが「突然の没収・全面禁止」ですが、これは多くの場合逆効果になります。

なぜ逆効果か:

①禁断症状(離脱症状)に近い反応が起きる 依存が強い状態でのスマホ取り上げは、アルコール・薬物依存の離脱症状に類似した強い不安・焦燥・怒りを引き起こします。これが暴言・暴力・自傷行為につながることがあります。

②根本原因が解決されない スマホを取り上げても、「なぜスマホに依存するようになったか」という背景(孤独感・不安・学校での困難・発達特性)が解決されなければ、スマホを返した後すぐ元に戻るか、別の問題行動に移行します。

③親子関係の破壊 強制的な没収は「親は自分を理解しない敵」という認識を固定し、将来的な対話・支援の機会を奪います。

では何をすべきか

段階的な使用時間の削減(harm reduction) 急な全面禁止より、段階的に使用時間を減らすアプローチの方が実際的です。「今日から2時間まで→1週間後に1時間30分に→さらに1ヶ月後に1時間に」という段階的な移行が現実的です。

「何をするためにスマホを使うか」の見直し 全面禁止より「どのアプリを使っていいか・使わないか」という内容の選別が有効です。「SNSは2時間まで・ゲームは1時間まで・動画は30分まで」という区分けアプローチ。

専門家との相談なしに強制的な没収を行うことはお勧めしません。 特に依存が重篤な場合は、専門家の指導のもとで段階的に行うことが安全です。


13. 不登校・ひきこもりとスマホ・ゲーム依存の関係

不登校→スマホ依存のパターン

不登校になった子どもが、**「昼間にすることがない」「社会とのつながりをオンラインに求める」**という形でスマホ・ゲーム依存に至るパターンが非常に多いです。

この場合、スマホ・ゲームを取り上げることは、本人の唯一の居場所・楽しみ・社会とのつながりを奪うことになり、うつ状態の悪化・自傷行為につながるリスクがあります。

スマホ依存→不登校のパターン

深夜まで使用することで昼夜逆転・睡眠不足・朝起きられない→学校に行けないというパターンも多く見られます。

正しい対応

不登校とスマホ・ゲーム依存が重なっている場合は、どちらが先かを正確に評価し、背景にある問題(発達特性・うつ・不安・学校でのトラブル)から治療することが重要です。

スマホを「取り上げる」のではなく、「スマホの外にも楽しいこと・安心できる場所ができてきたら自然とスマホの時間が減っていく」という回復プロセスを理解することが、支援の基本です。


14. 治療の基本方針

スマホ・ゲーム依存の治療は、重症度・背景・家族の状況によって以下のアプローチを組み合わせます。

軽症〜中等症: 家族支援・生活習慣の改善・心理教育・必要に応じてCBTを中心に、外来での支援を行います。

中等症〜重症(日常生活が著しく機能不全): 動機づけ面接・CBT・家族療法に加えて、薬物療法(併存疾患の治療)を組み合わせます。

最重症(暴力・自傷・完全引きこもり・学校完全欠席): 集中外来プログラム・入院治療を検討します。


15. 【治療①】動機づけ面接・家族支援

動機づけ面接(MI:Motivational Interviewing)

スマホ・ゲーム依存の治療で最初に行われる重要なアプローチです。「変わりたい」という本人の内的動機を引き出すための面接技法で、「依存をやめなさい」という外圧ではなく「なぜ変わりたいのか・変わることでどんな良いことがあるか」を本人自身が言語化するプロセスを大切にします。

依存問題の治療では**「本人が変わりたいと思っていない(前熟考期)」状態が多く**、そこに強制的に治療を押し付けても効果がありません。動機づけ面接を通じて「変わってみようかな(熟考期)」へと段階的に移行させることが重要です。

家族支援・心理教育

保護者への以下の支援が治療の重要な柱です。

  • スマホ・ゲーム依存の医学的な理解(「意志の問題ではない」という認識の転換)
  • 効果的な関わり方・コミュニケーションの練習
  • 「ルールを決めて守らせる方法」ではなく「関係性を改善する方法」
  • 保護者自身の精神的健康のサポート(消耗・自責感への対処)

16. 【治療②】認知行動療法(CBT)

スマホ・ゲーム依存に対するCBTは以下の要素を含みます。

機能分析: どのような状況でスマホ・ゲームに向かうのか(トリガーの特定)、使用することでどんな感情的な問題を解決しているのかを分析します。

認知再構成: 「ゲームしかできない」「現実は怖い」という認知の歪みを現実的な視点に修正します。

行動活性化: ゲーム以外の活動への参加を段階的に増やしていきます。

衝動のコントロール: スマホ・ゲームへの衝動が生じたときの対処スキル( urge surfing・代替行動)を身につけます。

ソーシャルスキルトレーニング(SST): オンライン以外での人間関係スキルを練習します。


17. 【治療③】薬物療法

スマホ・ゲーム依存そのものに対する特異的な薬物療法は現時点では確立されていません。ただし、背景にある精神疾患・発達特性への薬物療法が依存症状の改善につながることが多いです。

ADHDへの治療薬: メチルフェニデート(コンサータ)・アトモキセチン(ストラテラ)・グアンファシン(インチュニブ)などのADHD治療薬は、衝動制御の改善・注意力の向上を通じてゲーム依存の改善に寄与することがあります。

うつ病・不安症へのSSRI: 抑うつ・不安が依存の背景にある場合、SSRIによる治療が有効です。

睡眠障害への対応: メラトニン(メラトベル)などを用いた睡眠リズムの改善が、昼夜逆転の是正につながります。


18. 【治療④】入院・集中プログラム

入院治療の適応

以下の状況では入院治療・集中プログラムを検討します。

  • 外来治療を継続しても改善がみられない重症例
  • 暴言・暴力・自傷行為が頻繁に起きている
  • 完全なひきこもり・学校完全欠席が長期化している
  • 昼夜逆転が極度に固定化し外来での修正が困難
  • 家族が完全に疲弊・崩壊している

入院治療の内容

デジタルデトックス(スマホ・ゲームなしの環境)・規則正しい生活リズムの確立・集団プログラム(CBT・SST・作業療法)・家族との関係修復・段階的な社会復帰支援が行われます。


19. 回復の経過と予後

回復は長期的なプロセス

スマホ・ゲーム依存の回復は、数週間で完結するものではなく、数ヶ月〜数年にわたる長期的なプロセスです。「波」があり、良くなったと思ったら戻ることを繰り返しながら徐々に改善していきます。

予後に影響する要因

良好な予後につながる要因:

  • 早期発見・早期介入
  • 家族が協力的で関係性が良好
  • 背景にある精神疾患(ADHD・うつ病等)が適切に治療されている
  • 学校・社会での代替の居場所・活動がある

回復が難しい要因:

  • 長期間放置して重症化した状態
  • 家族関係が崩壊している
  • 背景にある精神疾患が未治療
  • 社会的なつながりが完全に失われている

「回復」とはゼロにすることではない

スマホ・ゲームを「ゼロにすること」が回復の目標ではありません。「自分でコントロールできる状態に戻ること」「スマホ以外にも楽しいこと・つながりがある状態になること」が現実的な回復の目標です。


20. よくある質問(FAQ)

Q. 何時間以上使ったら依存ですか?

A. 使用時間だけで依存かどうかは判断できません。1日2時間でも「やめられない・学校に行けない・家族関係が壊れている」なら依存のサインです。逆に5時間でも「勉強・友人関係・睡眠が保てている・やめようと思えばやめられる」なら問題が少ないこともあります。時間より「生活への影響」と「コントロールできているか」で判断してください。

Q. 小学生でもスマホ・ゲーム依存になりますか?

A. なります。むしろ前頭前野が未発達な小学生・中学生ほど依存しやすいとされています。低年齢からのスマホ・ゲームデビューは、適切なルール設定・保護者の関わりがより重要です。

Q. ゲームを取り上げたら暴れます。どうすればいいですか?

A. まず安全を確保してください。激しい暴力がある場合は、一人で抱え込まず、すぐに児童精神科に相談してください。暴力がある状態でのスマホ取り上げは危険であり、専門家の指導のもとで段階的に行うことが必要です。

Q. 不登校になってスマホ漬けです。スマホを取り上げるべきですか?

A. 不登校とスマホ依存が重なっている場合は、特に慎重な対応が必要です。スマホが「唯一の居場所」になっているケースでは、取り上げることでうつ状態の悪化・自傷行為につながるリスクがあります。まず児童精神科に相談し、専門家の指導のもとで計画を立てることをお勧めします。

Q. 病院に連れて行きたいが本人が拒否します。

A. まず保護者だけで相談に来ていただくことから始められます。本人を無理やり連れてくることは逆効果になることがほとんどです。和光医院では、保護者への情報提供・関わり方のアドバイス・本人が来られる環境づくりのサポートから始めることができます。

Q. ゲームを「完全にやめさせる」ことを目標にすべきですか?

A. 多くの場合、「完全にやめること」より「コントロールできること」が現実的な目標です。ゲームそのものが問題ではなく、「コントロールできない状態」が問題です。完全禁止を強制することより、使い方を学ぶことがより長期的な回復につながります。


21. 和光医院での診療について

名古屋市千種区にある和光医院は、児童精神科を専門とするクリニックです。スマホ・ゲーム依存・インターネット依存に関する専門的な評価と支援を行っています。

当院が大切にしていること

「ゲームばかりしている子ども」を責めるのではなく、その背景にある苦しさ・孤独感・発達特性・家族の疲弊を丁寧に評価し、本人と家族が一緒に回復できる支援を提供することを大切にしています。

当院での対応内容

  • スマホ・ゲーム依存の重症度評価・診断
  • 発達特性(ASD・ADHD)の評価・診断(背景の精査)
  • うつ病・不安症・睡眠障害など併存疾患の評価・治療
  • 動機づけ面接・認知行動療法(CBT)
  • 薬物療法(ADHD治療薬・SSRI・睡眠薬等)
  • 保護者への心理教育・家族支援
  • 不登校・ひきこもりへの包括的な支援
  • 学校・支援機関との連携

こんな方はぜひご相談ください

  • スマホ・ゲームが止められず学校に行けない
  • 注意すると激しく怒る・暴言・暴力がある
  • 昼夜逆転・朝起きられない
  • 不登校とスマホ依存が重なっている
  • ADHDやASDがあるかもしれない
  • 「どこに相談すればいいかわからない」
  • 本人は拒否しているが保護者だけで相談したい

「本人が来られなくても大丈夫です。まず保護者だけのご相談から始めることができます。一人で抱え込まず、まずはお気軽にご連絡ください。」


まとめ

  • スマホ・ゲーム依存は意志の問題ではなく、脳のドーパミン報酬回路が関与する医学的な問題です
  • WHOのICD-11でゲーム障害が正式に疾患として収載されています
  • ADHD・ASD・うつ病・不安症などの精神疾患・発達特性が背景にあることが多く、正確な評価が重要です
  • 自宅での対策は「禁止・没収」ではなく「一緒にルールを決める・環境を整える・代替活動を見つける」が基本です
  • 突然のスマホ取り上げは激しい反応・暴力につながるリスクがあり、専門家の指導のもとで段階的に行うことが必要です
  • 治療は動機づけ面接・CBT・家族支援・薬物療法(併存疾患への)を組み合わせます
  • 不登校とスマホ依存が重なっている場合は特に慎重なアプローチが必要です
  • まず保護者だけの相談から始めることができます

和光医院(名古屋市千種区)児童精神科専門クリニック お問い合わせ・ご予約はお電話またはウェブ予約にて承っております。

 

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患者様へのご案内

  • 明細書について:当院では、療養費規則に基づき明細書の発行を無料で行っています。
  • 一般名による処方について:後発医薬品が存在する場合は、商品名ではなく一般名(有効成分名)で処方することがあります。
  • 医療情報の活用について:当院では、安心な医療を提供する為、オンライン資格確認や電子処方箋データ等の情報を活用して診療を行っています。