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2026.07.14ブログ

ADHD治療の新選択肢「エンデバーライド」とは?ゲーム型デジタル治療補助アプリを和光医院(名古屋市千種区・児童精神科)が詳しく解説

ADHD治療の新選択肢「エンデバーライド」とは?ゲーム型デジタル治療補助アプリを和光医院(名古屋市千種区・児童精神科)が詳しく解説

「ゲームでADHDが治療できるって本当ですか?」「薬の代わりになりますか?」「うちの子にも使えますか?」——2026年6月、日本のADHD治療に全く新しい選択肢が登場しました。その名も「エンデバーライド(ENDEAVORRIDE®)」。スマートフォンやタブレットで1日25分ゲームに取り組むだけでADHDの不注意症状を改善するという、これまでにない医療機器プログラムです。名古屋市千種区の児童精神科専門クリニック・和光医院が、エンデバーライドの仕組み・効果・対象者・処方条件・薬との違いについて、保護者の方にわかりやすく詳しく解説します。


目次

  1. エンデバーライドとは何か——「ゲームで治療」の意味
  2. なぜゲームでADHDに効果があるのか(作用のメカニズム)
  3. エンデバーライドのエビデンス(臨床試験の結果)
  4. エンデバーライドの対象となる子ども(患者要件)
  5. 処方できる医師・施設の条件
  6. 実際の使い方——1日25分・6週間
  7. 薬(コンサータ・ストラテラ等)との違い・関係
  8. エンデバーライドのメリットと現時点での限界
  9. 費用・保険適用について
  10. よくある質問(FAQ)
  11. 和光医院での診療について

1. エンデバーライドとは何か——「ゲームで治療」の意味

**エンデバーライド(ENDEAVORRIDE®)**は、2025年2月に日本で製造販売承認を取得し、2026年6月5日に塩野義製薬から発売された、小児ADHDを対象とした日本初のデジタル治療補助アプリです。

米国のAkili, Inc.が開発し(米国ではEndeavorRx®として2020年にFDA承認)、塩野義製薬が日本・台湾での独占的開発・販売権を取得しています。

「デジタル治療機器(DTx)」という新しいカテゴリー

エンデバーライドは単なるゲームアプリでも知育アプリでもありません。**「デジタル治療機器(Digital Therapeutics:DTx)」**という全く新しいカテゴリーの医療機器プログラムです。

比較 一般のゲーム・知育アプリ エンデバーライド(DTx)
根拠 なし・または限定的 臨床試験で有効性・安全性を確認
規制 対象外 医療機器として薬機法上の承認が必要
入手方法 自由にダウンロード 医師の処方が必要
目的 娯楽・教育 医学的な治療補助
保険 なし 診療報酬での算定対象

「ゲームで治療」と聞くと「本当に医療なの?」と驚かれるかもしれませんが、エンデバーライドは薬のように体内に成分を取り入れるのではなく、特定の視覚刺激や操作タスクを通じて脳の注意機能ネットワークを直接トレーニングするという原理に基づく医療機器です。


2. なぜゲームでADHDに効果があるのか(作用のメカニズム)

ADHDの脳で何が起きているか

ADHD(注意欠如多動症)は、前頭前野を中心とした脳のネットワーク(前頭前野—頭頂葉ネットワーク)の機能不全が注意・集中・衝動制御の困難を引き起こす神経発達症です。このネットワークは「注意の司令塔」として働いており、ADHDではこの部分の活動が弱い・不安定という特徴があります。

デュアルタスク訓練の仕組み

エンデバーライドのゲームは**「デュアルタスク(二重課題)」**という設計になっています。

ゲームの内容は、宇宙船(乗り物)を操作しながら特定の視覚刺激にのみ反応するというアクションゲームです。

  • ひとつ目のタスク: 画面上の特定の刺激のみに素早く反応する(注意の選択・集中)
  • ふたつ目のタスク: 同時に乗り物を操作し続ける(運動制御の持続)

この2つを同時にこなす訓練を繰り返すことで、前頭前野—頭頂葉ネットワークへの神経入力が繰り返し行われ、注意機能に関わる神経回路の機能的変化(神経可塑性)が促されると考えられています。

また、ゲームは**アダプティブアルゴリズム(適応型難易度調整)**を採用しており、子どもの状態に合わせて自動的に難易度が変化します。簡単すぎず・難しすぎない最適な刺激を維持することで、脳への効果的なトレーニングを持続させます。

「ただのゲーム」との決定的な違い

市販のゲームやスマホアプリと根本的に異なるのは、エンデバーライドが**「脳の特定の注意機能ネットワークを標的として設計された医学的な刺激プログラム」**であるという点です。ゲームを楽しむことが目的ではなく、ゲームを通じた脳への継続的な刺激入力が治療の本質です。


3. エンデバーライドのエビデンス(臨床試験の結果)

国内第3相臨床試験(承認の根拠)

日本での承認は、国内で実施された臨床試験の結果に基づいています。

試験の概要:

  • 対象:環境調整・心理社会的治療が実施されていた6〜17歳の小児ADHD患者164名
  • デザイン:多施設オープンラベル試験
  • 主要評価項目:ADHD-RS-IV 不注意スコアのベースラインからの変化量

結果: <cite index=”29-1″>エンデバーライド群は通常治療群(環境調整や心理社会的治療継続)に対して、治療開始6週時点で統計的に有意な改善を認め(p<0.05)、試験における主目的を達成しました。</cite>群間差は −2.97(p<0.0001)と報告されています(Mikami et al., Psychiatry Clin Neurosci. 2025)。

エビデンスの限界として知っておくべきこと:

この試験はオープンラベル(患者・医師ともに割り付けを知っている)デザインであり、プラセボ効果の影響を除外できません。ADHD-RS-IVは保護者・医師による評価尺度のため、オープンラベル試験では過大評価のリスクがあります。また、薬物療法中の患者を主対象とした試験ではありません。

米国(FDA承認)のエビデンス

米国では8〜12歳を対象とした無作為化対照試験(STARS-ADHD試験:Lancet Digital Health 2020掲載)が実施されており、薬物療法との併用でADHDの機能障害スコアの改善が示されています。ただし米国の試験デザイン・対象年齢は日本の試験と異なります。

現時点での研究課題

  • 長期的な有効性(6週後以降の効果の持続)
  • 薬物療法との直接比較
  • ASD(自閉スペクトラム症)が合併している場合への効果
  • 就学前の子ども(6歳未満)への適用
  • 多動・衝動性優勢型ADHDへの効果

これらはいずれも今後の研究課題とされています。


4. エンデバーライドの対象となる子ども(患者要件)

エンデバーライドは、すべてのADHDと診断された子どもに処方できるわけではありません。以下の条件をすべて満たす必要があります。

対象となる子ども

年齢: 6歳以上17歳以下

ADHDの型:

  • 不注意優勢型(不注意症状が中心)
  • 混合型(不注意+多動・衝動性が共に存在)

⚠️ 現時点では対象外:

  • 多動・衝動性優勢型:現時点では有効性・安全性データが不十分として適応から除外されています

前提条件

環境調整・心理社会的治療をすでに実施しているにもかかわらず、症状の改善が不十分な場合に導入が検討されます。

使用できないケース(除外基準)

  • てんかん・光感受性てんかんのある方(ゲームの視覚刺激が発作を誘発するリスク)
  • 運動障害があり操作が困難な場合
  • カラー視覚に問題がある場合
  • ゲームデバイス(スマホ・タブレット)を使用できない環境にある場合

5. 処方できる医師・施設の条件

エンデバーライドは医師の処方が必要な医療機器です。すべての医療機関・すべての医師が処方できるわけではありません。

施設要件

  • 所定の発達障害に関する研修または児童思春期精神医療に関する研修を修了した医師が1名以上配置されていること
  • 過去6か月間に20歳未満の発達障害患者の初診を月平均5名以上実施していること

処方できる医師の要件

発達障害または児童思春期精神医療に関する適切な研修を修了した医師であること。

対象となる主な研修(例示)

発達障害に関する研修:

  • 日本小児科医会「子どもの心」研修会
  • 日本小児保健協会等主催「小児かかりつけ医のための発達障害スキルアップ講座」
  • 日本小児神経学会「子どものこころのプライマリケア・セミナー」

児童思春期精神医療に関する研修:

  • 日本精神科病院協会「児童・思春期精神医学対策講習会スタンダードコース」
  • 日本児童青年精神医学会「児童思春期精神医療研修」
  • 国立国際医療研究センター国府台病院主催研修(2種類の両方受講が必要)

「エンデバーライドを処方してほしい」と思ったら、まずかかりつけの医師・医療機関が処方できる施設要件を満たしているか確認することが第一歩です。


6. 実際の使い方——1日25分・6週間

基本的な使用方法

  1. 医師がエンデバーライドを処方する
  2. 患者(保護者)が専用アプリをスマートフォンまたはタブレットにダウンロード・インストールする
  3. 1日1回・約25分ゲームに取り組む
  4. これを6週間継続する

医師の管理画面

医師は専用の「医師管理画面」から患者の使用状況(プレイ時間・頻度・進捗)をリモートで確認することができます。これにより、受診時に使用状況を確認しながら治療を調整できます。

使用するデバイスの条件

  • スマートフォンまたはタブレット(iOS・Android)
  • 安定したインターネット接続環境
  • 一定のスクリーンサイズ・操作性が必要

継続のコツ

1日25分という短時間ですが、毎日継続することが重要です。保護者の方が時間を決めてサポートすることが、継続率を高めるポイントです。


7. 薬(コンサータ・ストラテラ等)との違い・関係

「エンデバーライドを使えば薬を飲まなくていい?」という質問をよく受けますが、答えはNOです。

エンデバーライドは薬の「代替」ではなく「補助」

比較 ADHD治療薬(コンサータ・ストラテラ・インチュニブ等) エンデバーライド
作用の仕組み ドーパミン・ノルアドレナリン系への薬理学的作用 神経回路への反復刺激による機能変化
効果の速さ 比較的速い(服用後数時間〜) 6週間の継続使用で評価
副作用 食欲低下・不眠・頭痛等 現時点では重篤な副作用報告は少ない
位置づけ 標準的な薬物療法 補助的な治療選択肢
対象症状 不注意・多動・衝動性全般 主に不注意症状(不注意型・混合型)

エンデバーライドは「心理社会的治療を行っても十分に改善しない場合」に追加する補助的な位置づけであり、薬物療法の代わりにはなりません。 薬物療法を受けている場合もエンデバーライドを追加することが可能で、日本の臨床試験でも薬物療法との併用ケースが含まれていました。

薬を飲みたくない場合の選択肢として

一方で、「副作用が心配で薬を使いたくない」「薬は最後の手段にしたい」というご家族には、エンデバーライドが心理社会的治療と組み合わせた非薬物療法の選択肢として意味を持ちます。ただし「薬の代わり」ではなく「薬を使わない段階での補助的治療」という位置づけです。


8. エンデバーライドのメリットと現時点での限界

メリット

①非薬物療法である 食欲低下・不眠・頭痛など、ADHD治療薬に見られる副作用がありません。「薬は使いたくない」「副作用が心配」というご家族にとって重要な選択肢です。

②子どもが取り組みやすい ゲーム形式のため、「治療」という感覚なく取り組める子どもが多いです。

③遠隔での使用・管理が可能 自宅で行えるため、通院の負担が増えません。医師は管理画面で状況を確認できます。

④ADHD治療の選択肢が広がった 薬物療法・心理社会的治療に加えて、デジタル治療という第三の選択肢が加わったことは、治療の多様なニーズに応えるという意味で非常に意義があります。

⑤日本初のDTx保険収載 日本のADHD治療にデジタル治療機器という概念が正式に導入されたことは歴史的な意義があります。

現時点での限界

①オープンラベル試験のみ 国内第3相試験はプラセボ対照の盲検化試験ではなく、プラセボ効果の影響を除外できていません。

②長期効果が不明 6週間の試験結果はありますが、長期的な効果の持続については今後の研究が必要です。

③多動・衝動性優勢型には使えない 現時点では不注意優勢型・混合型のみが適応であり、多動・衝動性が主症状の場合は対象外です。

④薬物療法との直接比較データなし 薬(コンサータ・ストラテラ等)とどちらが優れているか、または同等かを直接比較した試験はありません。

⑤ASD合併例・就学前児童への適用が未確立 ASDが合併している場合や6歳未満の子どもへの有効性は現在研究中です。

⑥「魔法のゲーム」ではない 「ゲームをするだけで自然に治る」という理解は誤りです。毎日25分を6週間継続するという取り組みが必要であり、継続できない場合には効果が期待できません。


9. 費用・保険適用について

エンデバーライドは医療保険の適用対象となり、令和8年度診療報酬改定において「プログラム医療機器等指導管理料(B005-14)」として算定されます。

保険が適用されることで、自己負担は3割負担(小学生以下は地域によりさらに軽減あり)となります。

ただし、処方できる施設要件・患者要件を満たした場合にのみ保険算定可能です。詳細な費用については受診する医療機関にご確認ください。


10. よくある質問(FAQ)

Q. エンデバーライドは「ゲーム依存」にならないですか?

A. エンデバーライドは1日25分という使用時間が医学的に設定されており、市販のゲームのように際限なく遊ぶものではありません。また、ゲーム依存の観点からも使用後のモニタリングが推奨されています。ゲーム依存が心配な場合は担当医師に相談してください。

Q. 薬を飲んでいる子どもにも使えますか?

A. 使えます。日本の臨床試験でも薬物療法中の患者が含まれていました。薬との併用が禁忌ということはありませんが、担当医師の指示のもとで使用してください。

Q. 6週間で終わりですか?それ以降はどうなりますか?

A. 国内臨床試験は6週間を評価期間としていますが、6週間以降の継続使用については担当医師と相談して決定します。長期使用の効果については現在も研究が進んでいます。

Q. どこの病院・クリニックでもエンデバーライドを処方してもらえますか?

A. いいえ。処方には施設要件(研修修了医師の配置・過去6ヶ月の発達障害初診月平均5名以上)を満たした医療機関でのみ処方できます。「エンデバーライドを使ってみたい」という場合はまず担当医師に確認してください。

Q. ADHDと診断されたばかりですが、すぐに使えますか?

A. 処方の前提として「環境調整・心理社会的治療を実施しても改善が不十分」という条件があります。診断直後にすぐ処方されるものではなく、まず環境調整や心理社会的治療が先行することが必要です。

Q. 子どもがゲームに飽きてやめてしまったら?

A. 毎日25分の継続が効果の前提となります。継続できない場合は効果が期待できない可能性があります。「飽きてしまう」「続けられない」という場合は担当医師に相談してください。アダプティブアルゴリズムにより難易度は自動調整されますが、継続のモチベーション維持は保護者のサポートが重要です。

Q. ADHD以外(ASD・学習障害など)にも効きますか?

A. 現時点ではADHD(不注意優勢型・混合型)のみが適応です。ASD・学習障害単独には適応がありません。ASDとADHDが合併している場合の効果については現在研究中であり、確立されていません。


11. 和光医院での診療について

名古屋市千種区にある和光医院は、児童精神科を専門とするクリニックです。ADHD・ASD・発達障害の診断・評価・治療に専門的に対応しています。

エンデバーライドについてのご相談

エンデバーライドは2026年6月に発売されたばかりの新しい治療法です。当院では適正使用指針に基づき、適切な患者さんへの導入を検討しています。「エンデバーライドについて詳しく聞きたい」「うちの子に適用できるか知りたい」という場合は、まず診察時にお気軽にご相談ください。

ADHDの治療全般について

当院では、ADHDに対して以下の包括的な治療・支援を提供しています。

  • ADHDの診断・重症度評価(ADHD-RS・Conners等)
  • 発達検査・知能検査(WISC-Ⅴ等)
  • 環境調整・心理社会的治療の提案
  • 薬物療法(コンサータ・ストラテラ・インチュニブ・ビバンセ等)
  • 認知行動療法・ペアレントトレーニング
  • 学校・支援機関との連携
  • エンデバーライドのご相談(適応確認後)

こんな方はぜひご相談ください

  • 子どもがADHDと診断されたが治療方針に迷っている
  • 薬を使わない治療法を探している
  • すでにADHD治療を受けているが効果が不十分に感じる
  • エンデバーライドについて詳しく知りたい
  • 集中力・不注意について専門家に評価してほしい

まとめ

  • エンデバーライドは2026年6月に発売された、日本初の小児ADHD向けデジタル治療補助アプリ(DTx)です
  • スマホ・タブレットで1日25分・6週間のゲームを通じて、前頭前野の注意機能ネットワークをトレーニングします
  • 国内第3相臨床試験で不注意スコアの有意な改善が示されましたが、オープンラベル試験であり長期効果は今後の研究課題です
  • 対象は6〜17歳の不注意優勢型・混合型ADHD(多動・衝動性優勢型は現時点で対象外)
  • 処方には施設要件・医師要件・患者要件すべてを満たす必要があります
  • 薬の「代替」ではなく「補助」として、心理社会的治療と組み合わせて使用するものです
  • 副作用が少ない非薬物療法として、「薬を使いたくない」ご家族の選択肢のひとつになり得ます
  • 「魔法のゲーム」ではなく、毎日の継続が必要な医療的介入であることを正確に理解することが重要です

和光医院(名古屋市千種区)児童精神科専門クリニック お問い合わせ・ご予約はお電話またはウェブ予約にて承っております。

参考: Mikami K, et al. Psychiatry Clin Neurosci. 2025; DOI: 10.1111/pcn.13833 塩野義製薬 ENDEAVORRIDE発売プレスリリース 2026年6月5日 日本ADHD学会 ENDEAVORRIDE適正使用指針 第1版 2026年5月31日

 

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