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ADHDのテスト・受験で集中できない——周囲の人が気になる原因と対策を和光医院(名古屋市千種区・児童精神科)が詳しく解説
ADHDのテスト・受験で集中できない——周囲の人が気になる原因と対策を和光医院(名古屋市千種区・児童精神科)が詳しく解説
「テストになると周りの子の鉛筆の音が気になって集中できない」「隣の子が動くと視線がそちらへ向いてしまう」「入試本番でパニックになってしまった」「勉強はできるのに試験になると実力が出せない」——ADHDの子どもや青年が抱えるこうした悩みは、「注意力がない」という一言では片付けられない、脳の機能特性に根ざした深刻な問題です。名古屋市千種区の児童精神科専門クリニック・和光医院が、ADHDとテスト・試験場面での集中困難の原因から、実践的な対策・受験のための配慮申請・医療的サポートまで、保護者と本人にわかりやすく詳しく解説します。
目次
- なぜADHDの子どもはテストで集中できないのか
- 「周囲が気になる」のはADHDの脳の特性から必然
- テスト・試験で現れる具体的な困難の種類
- テスト場面を悪化させる要因
- 【自分でできる対策①】感覚刺激を減らすグッズ・工夫
- 【自分でできる対策②】試験前のルーティンと準備
- 【自分でできる対策③】試験中の注意の立て直し方
- 【自分でできる対策④】試験後の反省と次への活かし方
- 【保護者ができるサポート】家庭での準備と環境整備
- 【学校・試験機関への配慮申請】合理的配慮とは
- 大学入学共通テストでの配慮申請について
- 高校受験(愛知県)での配慮申請について
- 【医療的サポート①】薬物療法の活用
- 【医療的サポート②】認知行動療法・トレーニング
- 【医療的サポート③】診断書・意見書の作成
- ADHDと試験不安(テスト不安)の関係
- よくある質問(FAQ)
- 和光医院での診療について
1. なぜADHDの子どもはテストで集中できないのか
ADHDの子どもがテストや試験で特に苦労する理由は、「やる気の問題」でも「練習不足」でもなく、脳の機能特性そのものにあります。
ADHDの脳で何が起きているか
ADHDは前頭前野を中心とした脳のネットワーク(実行機能ネットワーク)の機能不全を特徴とする神経発達症です。実行機能とは、以下の能力をまとめた概念です。
- 注意の制御: 重要な情報に注意を向け続ける・不要な情報を無視する
- 抑制制御: 衝動的な反応を抑える・気が散る刺激を無視する
- ワーキングメモリ: 頭の中で複数の情報を保持しながら処理する
- 柔軟な切り替え: 必要に応じて注意を切り替える
テスト場面では、これらすべての実行機能が同時に高いレベルで求められます。ADHDの脳はこれらの機能が不安定・不十分なため、テストという状況そのものが非常に高い負荷をかけるのです。
「普段できることがテストでできない」の謎
ADHDの子どもが「家では問題が解けるのにテストでは解けない」「勉強はしているのに成績が上がらない」という状況になりやすい理由があります。
家庭での勉強は**「自分がコントロールできる環境」**です。気が散ったら好きなタイミングで休憩できる・静かな環境を作れる・音楽をかけられるなど、自分に合った環境を整えられます。
一方テスト場面は、**「自分がコントロールできない環境」**です。他の生徒の音・見知らぬ環境・時間制限・緊張感・「絶対に集中しなければ」というプレッシャーが、ADHDの脳にとって最も苦手な状況を作り出します。
2. 「周囲が気になる」のはADHDの脳の特性から必然
「テスト中に周りの音・動き・気配が気になって仕方ない」という体験は、ADHDの最も代表的な症状のひとつです。これを「集中力がない」「努力が足りない」と片付けるのは根本的な誤解です。
抑制制御の困難——「気にしないこと」ができない
神経学的に、ADHDの脳は**「無関係な刺激を自動的に無視するフィルタリング機能」が弱い**とされています。
定型発達の脳では、テスト中に他の生徒の鉛筆音・咳・動きなどが入ってきても、脳が自動的にそれらを「無関係」と判断して意識の外に押しやります。ADHDの脳では、このフィルタリングが効かず、すべての刺激が同じ優先度で意識に上ってきます。「気にしないように」と意識すればするほど、かえってその刺激に意識が向いてしまう(「白いクマのことを考えないで」と言われると考えてしまうのと同じ原理:皮肉過程理論)。
選択的注意の弱さ
ADHDでは**「今重要なもの(問題文)に注意を向け続けながら、重要でないもの(周囲の音)を無視する」という選択的注意が困難**です。注意は目の前の問題文に向けたいのに、隣の子が動いた瞬間に注意が飛んでしまい、また問題文に戻ってきたとき「どこまでやっていたかわからない」という状態が繰り返されます。
過覚醒と感覚過敏
ADHDに伴う感覚過敏(音・光・触覚などへの過剰な反応)がある場合、テスト会場での音・光・他人の気配が通常より何倍もの強度で知覚されることがあります。これは「気にしすぎ」ではなく、神経学的な過覚醒(sensory overload)です。
状況の新規性・不確実性への過剰反応
ADHDの脳は新規の刺激・変化・予測できない出来事に強く反応する傾向があります。入試会場・見知らぬ試験室・初めての監督員の顔など、「いつもと違う」環境すべてが強い注意を引きつけ、問題に集中することをさらに困難にします。
3. テスト・試験で現れる具体的な困難の種類
注意・集中の困難
- 問題文を読んでいる途中で別のことを考え始める
- 周囲の音(鉛筆・咳・紙をめくる音)に注意が引き付けられる
- 「集中しなければ」と思うほど、かえって集中できなくなる
- 一問解いた後、次の問題に移るタイミングで注意が途切れる
- 気づいたら試験終了近くになっていた(時間管理の失敗)
ワーキングメモリの困難
- 問題文の前半を読んでいる間に、前半の内容を忘れる
- 計算の途中式を頭の中で保持できない
- 問題の指示を読んでいる間に指示の最初の部分を忘れる
- 複数ステップが必要な問題で、途中のステップを飛ばす・忘れる
時間管理の困難
- 特定の問題に時間をかけすぎて後の問題が解けない
- 見直しの時間を確保できない
- 試験残り時間の感覚がつかめない(時間の知覚困難)
- 問題を解き終わって時間が余ったときに何をすればいいか混乱する
衝動性による困難
- 問題文を最後まで読まずに答えを出す「早とちり」
- 答えを書いた後に見直さず提出する
- 「もっといい答えがあるかも」と迷って答えを何度も書き換える
- 解けない問題に時間をかけすぎて抜け出せない(固執性)
感情調節の困難
- 解けない問題に遭遇したときのパニック・フリーズ
- 「もうダメだ」という強い絶望感でそれ以降の問題に取り組めなくなる
- 試験中の焦り・不安が体の症状(動悸・腹痛・手の震え)として現れる
- 一つのミスが引き金となって試験全体への意欲が崩れる
4. テスト場面を悪化させる要因
高いプレッシャー・不安
試験の重要度が高いほど、ADHDの症状は悪化しやすいです。「絶対に失敗できない」「ここで実力を出さなければ」というプレッシャーが、前頭前野の機能をさらに低下させます。これは**「チョーキング(Choking:過度なプレッシャーによるパフォーマンスの低下)」**という現象で、ADHDでは特に起きやすいとされています。
睡眠不足
ADHDの子どもは睡眠障害(寝つけない・朝起きられない・睡眠の質が低い)を合併しやすく、試験前の緊張・不眠はパフォーマンスを著明に低下させます。睡眠不足は前頭前野の機能を直接低下させるため、ADHDの症状を増悪させます。
薬の効果時間とのミスマッチ
ADHD治療薬(コンサータ・ビバンセなど)には効果持続時間があります。試験開始時刻と薬の効果ピークが合っていない場合、本来の実力が発揮できないことがあります。
試験会場の感覚刺激
見知らぬ会場・硬い椅子・蛍光灯の光・エアコンの音・隣の受験者の存在など、テスト会場には感覚刺激が非常に多く存在します。感覚過敏があるADHDの子どもには、これらが集中を妨げる大きな因子になります。
5. 【自分でできる対策①】感覚刺激を減らすグッズ・工夫
耳栓・イヤーマフ(試験によっては使用可能)
周囲の音が最も大きな問題という場合、耳栓の使用が非常に有効です。多くの学校の定期テストでは耳栓の使用が黙認・許可されていることがあります。試験によっては事前に学校・試験機関への確認・申請が必要です。
医療用耳栓(NRR値の高いもの)・ループ(Loop)耳栓・フォーム耳栓など、遮音性と装着感のバランスが良いものを事前に試して自分に合うものを選んでおきましょう。
ノイズキャンセリングに慣れておく
平常の勉強時からノイズキャンセリング機能のある環境(図書館・静かなカフェ・防音イヤーマフ)で練習しておくことで、試験本番の環境変化に慣れやすくなります。
視野を狭める工夫
隣の受験者の動きが気になる場合、試験中は視野を意図的に問題用紙に絞る練習が有効です。目の端に入る刺激を減らすために、問題用紙を少し手前に引いて顔を近づけたり、手で顔の横を軽く遮ったりする工夫も有効です。
フィジェットツールの活用
フィジェットリング・滑らかなストーン・安全なフィジェットグッズを手の中で握ることで、手に適度な感覚刺激を与えて気が散るのを防ぐ効果があります。手が「何かをすべき」という衝動を、書くこと以外の小さな動きで満たすことで、集中が維持されやすくなります。試験によっては使用制限があるため事前確認が必要です。
6. 【自分でできる対策②】試験前のルーティンと準備
会場の「先行偵察」
初めての試験会場を事前に訪問しておくことは、ADHDの子どもにとって非常に重要な対策です。「会場がどんな場所か・席はどこか・トイレはどこか」という未知の情報が本番のパフォーマンスを低下させます。オープンキャンパス・説明会・模擬試験で実際の会場を経験しておきましょう。
当日のルーティンを固定する
ADHDの脳はルーティン(決まった手順)があると安心しやすいという特性があります。試験当日の起床時間・食事・移動手段・持ち物・試験開始前の行動を事前に決め、繰り返し練習しておきましょう。「毎回同じ」という安心感がパフォーマンスを安定させます。
薬の服用タイミングの調整
ADHD治療薬を服用している場合、試験開始時刻に薬の効果がピークになるよう服用タイミングを調整することが重要です。通常の服用時間より早い(または遅い)場合は、事前に医師に相談して試験日の服用計画を立ててください。模擬試験で試し、本番前に最適なタイミングを把握しておきましょう。
前夜の睡眠確保を最優先に
試験前夜の睡眠は、当日のパフォーマンスに直結します。「前夜に最後の追い込みをする」より、十分な睡眠を取ることのほうが試験結果に貢献します。ADHDの子どもは「眠れない→スマホを見る→さらに眠れない」という悪循環に陥りやすいため、就寝2時間前からのスクリーン遮断を前日から習慣にしておきましょう。
試験直前の「頭のウォームアップ」
試験開始の15〜20分前に、軽い計算問題・漢字書き取り・簡単な英文など「解けることが確実な問題」を解いておくことで、前頭前野を「試験モード」に切り替えておく効果があります。いきなり難問に向き合うより、簡単な問題から始めて集中モードに入ってから本番に臨む、というウォームアップ戦略です。
7. 【自分でできる対策③】試験中の注意の立て直し方
「注意が飛んだことに気づく」練習
ADHDの対策で最も重要なメタスキルは、**「今、注意が飛んだ」ということに気づく力(メタ認知)**です。気づかないまま別のことを考え続けるより、「あ、また飛んだ。問題に戻ろう」と素早く気づいて戻ってくる練習が、試験中の時間ロスを最小化します。
「アンカリング」技法——今ここに戻る
注意が飛んだときに素早く現在に戻るための合図(アンカー)を決めておきます。
例:
- 足の裏を床にしっかりつけて「今ここ」を感じる
- 鉛筆を握り直す動作を合図にする
- 「今、〇番の問題」と心の中で声にする
このアンカリングを日頃の勉強から練習しておくと、試験中に自動的に使えるようになります。
時間管理の「視覚化」
ADHDの時間感覚の困難(時間が経った感覚が薄い)に対して、時間を視覚的に管理するツールが有効です。
- タイムタイマー(残り時間が赤い扇形で視覚化される時計): 学校のテストで机上に置くことを許可してもらえる場合がある
- 試験用紙に時間配分を書き込む: 試験開始直後に「大問1→15分・大問2→20分」と問題用紙の余白に書いておく
- 定期的な時計確認のルール: 「大問1枚解き終わったら必ず時計を見る」というルールを決める
「とばし作戦」の徹底
ADHDの固執性(解けない問題から抜け出せない)への対策として、**「解けないと感じたら2分以内に次の問題へ移動するルール」**を事前に自分に課しておきます。「この問題は後で戻る」と問題番号に印をつけて次へ進む、という「とばし作戦」を、模擬試験から徹底的に練習しておきましょう。
パニックになったときの「リセット手順」
試験中に「もうダメだ」というパニック・フリーズが起きたときのための**「リセット手順」**を事前に決めておきます。
例:リセット3ステップ
- 鉛筆を置いて目を閉じる(5秒)
- 腹式呼吸を3回行う(吸う4秒・吐く8秒)
- 「今できる一番簡単な問題から始めよう」と心の中で言って、確実に解ける問題を1問解く
このリセット手順を平常時から練習しておくと、試験中に自動的に使えるようになります。
8. 【自分でできる対策④】試験後の反省と次への活かし方
「できなかったこと」ではなく「何が起きたか」の分析
試験後に「なんで集中できなかったんだ」と自己嫌悪になることはADHDの子どもに非常に多いですが、これは逆効果です。代わりに、「今日は何がトリガーになって注意が飛んだか」「どの瞬間にパニックになったか」「どの対策が有効だったか」を客観的に記録・分析する習慣を持ちましょう。
振り返りの4項目
試験後に以下を簡単にメモしておきます。
- 今日うまくいったこと(「大問1の時間配分はうまくいった」)
- 注意が飛んだタイミング(「隣の子が消しゴムを落としたとき」)
- 次回試したい対策(「耳栓を持っていく」)
- 医師・支援者に相談したいこと(「パニックになったときの対処法を聞きたい」)
9. 【保護者ができるサポート】家庭での準備と環境整備
「試験の練習」を本番と同じ条件で行う
家での勉強と試験場面の「ギャップ」を減らすために、家庭での模擬試験を本番と同じ条件で行う練習が重要です。
- 決まった時間に机について時間を計る
- 途中で話しかけない
- BGMなし・静かな環境で行う
- 本番と同じ筆記用具・消しゴムを使う
「家では解けるのに」という状況を「試験でも解ける」に変えるには、練習環境を本番に近づけることが最も効果的です。
試験前夜の「過干渉」を避ける
保護者の「ちゃんと準備できてる?」「絶対失敗しないでね」という言葉が、ADHDの子どものプレッシャーをさらに高めます。試験前夜は**「明日は〇〇を持ったね。あとはゆっくり寝よう」という言葉だけ**に留め、過剰な確認・激励を避けましょう。
薬の管理・試験日の服用計画の確認
ADHD治療薬の試験日の服用計画(服用時刻・食事の有無・予備の持参など)を事前に担当医と確認し、保護者が管理をサポートします。
10. 【学校・試験機関への配慮申請】合理的配慮とは
合理的配慮とは
合理的配慮(reasonable accommodation)とは、障害のある人が障害のない人と同等の教育・試験を受けられるよう、試験の実施方法・環境を調整することです。日本では2016年施行の障害者差別解消法により、学校・試験実施機関には合理的配慮の提供が義務(または努力義務)とされています。
「障害があるから有利にしてほしい」ではなく、「障害がない状態に近づけるための調整」という理解が重要です。
ADHDで申請できる主な配慮
試験環境の調整:
- 別室受験(周囲の受験者がいない環境での受験)
- 座席の配慮(端の席・前列・壁際)
- 試験会場の照明・音環境の調整
- 耳栓・イヤーマフの使用許可
試験方法の調整:
- 試験時間の延長(1.3〜1.5倍が多い)
- 休憩時間の付与
- 問題用紙の拡大
- ルビ(読み仮名)の付与(読み書き困難が合併する場合)
- パソコン入力の許可(書字困難が合併する場合)
申請に必要なもの
多くの場合、以下の書類が必要です。
- 医師の診断書・意見書: ADHDの診断・配慮が必要な理由・具体的に必要な配慮の内容を記載
- 在学する学校の申請書類
- これまでの支援の記録(個別の教育支援計画など)
診断書・意見書の作成は、担当の児童精神科医・精神科医に依頼してください。和光医院でも対応しています。
11. 大学入学共通テストでの配慮申請について
大学入試センターへの申請
大学入学共通テスト(共通テスト)では、発達障害(ADHD・LD等)のある受験者に対して試験時間の延長・別室受験・チェック解答・点字問題等の配慮が認められています。
主な配慮の内容:
- 試験時間の延長(通常の1.3倍)
- 別室受験
- 座席の指定(端・前列等)
- 問題用紙の拡大
申請の流れ:
- 在学する高校を通じて大学入試センターへ申請(申請期限は試験の数ヶ月前)
- 医師(主治医)の診断書・意見書が必要
- 大学入試センターによる審査・認定
- 認定された配慮での受験
重要なポイント:
- 申請は高校3年生の**早い時期(通常は9〜10月頃)**に行う必要があります
- 診断書には「ADHDの診断・症状・試験場面での困難の具体的内容・必要な配慮の種類」の記載が必要です
- 申請が認められるかどうかは審査によって決まります
最新の申請要件・期限は大学入試センターの公式ウェブサイトで必ず確認してください。
12. 高校受験(愛知県)での配慮申請について
愛知県公立高校入試での対応
愛知県公立高校入試(全日制・定時制)では、障害のある受験者に対して個別の配慮が検討される制度があります。
申請の流れ(概要):
- 在学する中学校を通じて教育委員会・受験先高校へ申請
- 医師の診断書が必要
- 教育委員会による審査・対応の決定
申請可能な主な配慮(例):
- 別室受験
- 試験時間の延長
- 座席の配慮
注意事項: 申請の内容・手続き・期限は年度・自治体によって異なります。在学中学校の担任・特別支援コーディネーター・教育委員会に早めに相談してください。また、私立高校の入試配慮については各高校に個別に問い合わせが必要です。
13. 【医療的サポート①】薬物療法の活用
ADHD治療薬が試験場面に与える効果
ADHD治療薬(中枢神経刺激薬・非刺激薬)は、前頭前野のドーパミン・ノルアドレナリン系を調整することで、注意の集中・維持・抑制制御・ワーキングメモリを改善します。適切に服用することで、試験場面での集中困難が改善する可能性があります。
主な薬剤と試験との関係
メチルフェニデート徐放剤(コンサータ): 効果持続時間は服用後1〜12時間程度です。午前8時に服用した場合、午前中から午後にかけての試験にカバーできます。
リスデキサンフェタミン(ビバンセ): 効果持続時間がやや長く、安定した効果が期待できます。食事の影響が少ない特徴があります。
アトモキセチン(ストラテラ): 即効性はなく、継続服用で効果が現れる薬剤です。毎日服用することで試験当日も安定した効果が期待できます。
グアンファシン徐放剤(インチュニブ): 衝動性・過活動への効果があり、試験時の落ち着きや注意の安定に寄与することがあります。
試験日の服用計画を医師と相談する
試験日に合わせた服用計画(服用時刻・用量の調整)は、必ず担当医師と相談して決めてください。自己判断での変更は避けてください。
14. 【医療的サポート②】認知行動療法・トレーニング
ADHDに対するCBT(認知行動療法)
ADHDの試験場面での困難に対して、以下のCBTの要素が有効です。
試験不安への認知再構成: 「失敗したらすべて終わり」「自分には絶対無理」という認知の歪みを、より現実的な見方に修正します。「完璧でなくていい・今できることをやれば十分」という思考パターンを身につけます。
実行機能トレーニング: 時間管理・計画立案・優先順位付けのスキルを、試験場面を想定した演習で繰り返し練習します。
マインドフルネス: 「今この瞬間」に意識を向けるマインドフルネスの練習は、試験中の「また気が散った」という気づきを早め、素早く問題に戻る力を育てます。
ペアレントトレーニング
保護者が子どものADHDの特性を正確に理解し、適切な関わり方を学ぶペアレントトレーニングも、試験対策の間接的なサポートとして重要です。
15. 【医療的サポート③】診断書・意見書の作成
合理的配慮申請のための書類
学校の定期テスト・高校受験・大学入試・資格試験での合理的配慮を申請するには、医師(精神科・児童精神科・小児科等)が作成した診断書または意見書が必要です。
意見書に記載すべき内容
- ADHDの診断名・診断時期
- 試験場面で生じる具体的な困難(注意の持続困難・感覚過敏・時間管理の困難など)
- 必要とされる具体的な配慮の内容(別室受験・時間延長・耳栓使用許可など)
- 診療を継続している旨と医師の署名・医療機関名
和光医院での対応
和光医院では、高校受験・大学共通テスト・各種試験・学校への合理的配慮申請のための診断書・意見書の作成に対応しています。必要な場合はご相談ください。
16. ADHDと試験不安(テスト不安)の関係
テスト不安とは
**テスト不安(Test Anxiety)**は、試験場面での強い不安・恐怖・回避傾向を特徴とする状態で、ADHDの子どもに非常に多く合併します。
テスト不安には2つの側面があります。
- 認知的不安: 「失敗するかも」「頭が真っ白になるかも」という心配・反芻思考
- 身体的不安: 動悸・手の震え・腹痛・発汗・吐き気
ADHDとテスト不安の悪循環
ADHDの集中困難→試験でうまくいかない経験の蓄積→「次も失敗する」という予期不安の形成→テスト不安の強化→さらに集中困難、という悪循環が生じやすいです。
テスト不安が強い場合は、ADHDの治療とともに、テスト不安への心理療法(CBT・曝露療法・リラクゼーション)を並行して行うことが重要です。
社交不安症との鑑別
「人前が怖い」という社交不安症もテスト場面の困難を引き起こします。ADHDと社交不安症の合併(30〜40%と報告)がある場合、両方への治療アプローチが必要です。
17. よくある質問(FAQ)
Q. 「テストのときだけ集中できない」はADHDのせいですか?
A. ADHDの特性は「コントロールできない環境」「高プレッシャー」「時間制限」という条件が重なるテスト場面で特に強く現れます。「家では集中できるのにテストでは集中できない」はADHDの典型的なパターンです。ただしテスト不安・社交不安症・他の発達特性が関与することもあるため、正確な評価が重要です。
Q. 受験前に診断を受ける意味はありますか?
A. 非常に大きな意味があります。①合理的配慮(別室受験・時間延長)の申請に診断書が必要、②薬物療法など医療的サポートを受けられる、③自分の特性を正確に理解して対策を立てられる、という3つの点で、受験前の診断は大きなメリットがあります。高校受験なら中学2年生、大学受験なら高校2年生のうちに受診することをお勧めします。
Q. 別室受験は「ズル」ではないですか?
A. 違います。別室受験は「障害がない状態に近づけるための調整」であり、有利にするものではありません。眼鏡が視力の弱い人にとっての合理的配慮であるのと同様に、別室受験はADHDの人にとっての合理的配慮です。むしろ、配慮なしに受験させることが「平等ではない」という視点が重要です。
Q. 試験中に薬が切れてしまいます。どうすればよいですか?
A. 試験時間・薬の種類・服用時刻の組み合わせについて、担当医師に相談してください。服用時刻の調整・薬の種類の変更・効果時間の長い薬剤への変更などで対応できることがあります。
Q. 小学校の定期テストでも配慮を申請できますか?
A. 申請できます。学校内の定期テストへの配慮は、在学校の担任・特別支援コーディネーター・管理職に相談することで対応が検討されます。公立学校は合理的配慮の提供が法的に義務付けられています。医師の診断書・意見書が申請に役立ちます。
18. 和光医院での診療について
名古屋市千種区にある和光医院は、児童精神科を専門とするクリニックです。ADHDの診断・治療・受験サポートに関して専門的な支援を行っています。
当院が大切にしていること
「テストで実力が出せない」「受験が不安で仕方ない」——その困難は努力不足でも気合いの問題でもありません。ADHDの脳の特性から必然的に生じる困難に対して、医療・心理・教育的な支援を組み合わせた包括的なサポートを提供することを大切にしています。
当院での対応内容
- ADHDの診断・重症度評価(ADHD-RS・Conners等)
- 発達検査・知能検査(WISC-Ⅴ等)
- 薬物療法(コンサータ・ビバンセ・ストラテラ・インチュニブ等)
- 認知行動療法・実行機能トレーニング
- テスト不安・社交不安症への心理的サポート
- 合理的配慮申請のための診断書・意見書作成
- 学校・受験機関との連携支援
- 保護者へのカウンセリング・ペアレントトレーニング
こんな方はぜひご相談ください
- テストになると周囲が気になって集中できない
- 家では勉強できるのに試験では実力が出せない
- 試験中にパニックになることがある
- 高校受験・大学受験を控えているがADHDの対策を知りたい
- 合理的配慮の申請のために診断書・意見書が必要
- ADHDの治療を受けているが試験場面での対策も知りたい
「受験が不安」「テストで集中できない」と感じたら、早めにご相談ください。適切な医療的サポートと具体的な対策で、多くの子どもが試験場面での困難を乗り越えています。
まとめ
- ADHDの子どもがテストで集中できないのは、脳の実行機能ネットワークの特性から必然的に生じる問題です
- 「周囲が気になって仕方ない」は抑制制御の困難・感覚過敏・選択的注意の弱さが原因です
- 自分でできる対策として、耳栓・視野の絞り込み・アンカリング技法・時間管理の視覚化・「とばし作戦」が有効です
- 試験前の準備として、会場偵察・当日ルーティンの固定・薬の服用タイミング調整・前夜の睡眠確保が重要です
- 合理的配慮(別室受験・時間延長)は「ズル」ではなく、平等な試験機会を確保するための正当な権利です
- 高校受験・大学共通テストでの配慮申請には医師の診断書・意見書が必要です
- ADHDの治療薬が試験場面での集中困難を改善する可能性があります
- テスト不安が強い場合はCBT・マインドフルネスを並行して行うことが有効です
- 受験前に早めに児童精神科を受診することで、医療・教育的な準備が整います
和光医院(名古屋市千種区)児童精神科専門クリニック お問い合わせ・ご予約はお電話またはウェブ予約にて承っております。
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子どものためのメンタルクリニック
医療法人永朋会 和光医院
診療科目
児童精神科・精神科・心療内科
発達障害(ASD・ADHD)、不登校、起立性調節障害、不安症、パニック症、チック症、強迫症、うつ症状など、お子さまから成人の方まで幅広く診療しております。
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和光医院 診療時間のご案内
【診療時間】
午前 9:00〜13:00
午後 15:00〜18:00
土曜 9:00〜14:00
【休診日】 日・祝日
患者様へのご案内
- 明細書について:当院では、療養費規則に基づき明細書の発行を無料で行っています。
- 一般名による処方について:後発医薬品が存在する場合は、商品名ではなく一般名(有効成分名)で処方することがあります。
- 医療情報の活用について:当院では、安心な医療を提供する為、オンライン資格確認や電子処方箋データ等の情報を活用して診療を行っています。