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成人期の注意欠如多動性障害(attention-deficit/hyperactivity disorder;ADHD)の治療について
今回は成人期の注意欠如多動性障害(attention-deficit/hyperactivity disorder;ADHD)の治療についてです。発達障害に関しては個人的には一つ前の診断基準である、アメリカ精神医学会の診断統計マニュアル第4版(DSM-Ⅳ-TR)(American Psychiatric Association, 2000)の方が分かりやすいと思っているので、今回はこちらを使って解説します。
・心理・社会的治療
現時点で使用可能な薬物によって,個人差はあるものの不注意や衝動性を中心とした症状や,二次的に生じている抑うつなどの症状が多少なりとも改善することにより,日常生活に対して間接的に良好な影響がある可能性は考えられます。しかし,PDDも同様ですが、、ADHDに対しても薬物療法だけで治療することはなく,心理・社会的治療を併用することが重要です。
AD/HDへの心理・社会的治療も基本的にはPDDと同じであり,まず必要なことは本人,家族に対して病態に関する正確な知識を伝えることです。成人AD/HDの患者は,幼少期からのAD/HDの症状により失敗体験を繰り返しており自己評価が著しく低い状態で受診することが多いです。本人と家族から生育歴を振り返る作業を通じて「育ち」を理解した上でAD/HDと診断することで,これまでの失敗体験の多くがAD/HD症状により引き起こされていたことを本人と家族が理解することができます。さらに,目の前でおきている問題を, 現在と過去の両方の側面からアプローチすることで自分の状態をより明確に理解することができ,その後の解決法を自らみつけることを強化することができます。
そしてその上で,患者の生活場面で必要とされるスキル(もの忘れへの対処,片付けの方法,スケジュール管理,優先順位の付け方,苛立つ場面での怒りの転化方法,集中力の持続のための工夫など)の獲得に対する援助が必要となります。
ADHDの方が成人期に至り医療機関を受診する場合には,症状の多様性のみならず,職場,対人関係,家族などさまざまな事態が複雑に絡みあっており,対応に苦慮することも少なくありません。成人期の発達障害者への対応としてもっとも重要なことは,まず彼らの持つ発達障害自体の適切な診断ですが,同時に患者の背景に存在する「育ち」を理解する必要があります。成人の発達障害の「育ち」には特徴があり,PDDにはPDDなりの,ADHDにはADHDなりの「育ち」があります。今目の前で起きている問題に対してアプローチしていくためには,今までどのように生きてきたのかを知ることが必要であり,その「育ち」を知ることでこれからどのように生きていくのかを予測でき今後の対応へつなげていくことができると思います。
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