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2023.03.12

子どもの分離不安障害について

今回は、「子どもの分離不安障害について」です。

 

分離不安、親から離れることへの過剰な不安、ポイントは「過剰な」というところです。分離不安があること自体は当たり前のことです。むしろ分離不安がない、となると、そのことの方が気になるかもしれません。分離不安が0となると、子ども側に愛情を受信する力が弱いとなるとASDなども疾患を鑑別する必要がでてきます。母子(もしくは養育者)との愛着の形成ができていれば、離れることで不安がある程度はでるはずです。もちろん我慢強い子どもであれば、その不安をコントロールしたり抑えこんだりすることはできるでしょう。しかし、それは不安がない、こととは異なります。

分離不安障害の主の症状となる、過剰な不安、①これは子ども本人が生まれながらに持つ気質によるもの、②そして母子関係(養育者との関係)を主とする環境的な要因、これらのどちらか、もしくは両方、が原因となります。ということは臨床的なアプローチは、①、②のどちらに原因のウェイトがあるかによって異なってくる、と考えています。①がメインなら個別での心理療法も効果があると思いますが、②が混ざってくるとなると母子関係の整理は間違いなく必要となります。②であれば本人の気質要素が少ないならば、母子関係が整理されれば、あっさりと症状がなくなることもあります。単純に母親の不安が本人に移行しているだけ、ということもあるわけです。もちろんもっと複雑な母子関係の整理が必要なこともありますが、複雑にとらえすぎて目の前に見えている問題を見逃すこともあり得ます。治療者が単純な問題だったのを、逆に複雑なものとしてとらえてしまうこと、少なからずあります。複雑なものが治療者側が好きだったりすると、そういうことも起こりうるわけです。精神科は治療者が自分の体(というか心というか)を使って、相手の気持ち、感情、思考を解釈する必要があるので、そうすると自分の固定概念とか考え方のくせ、その時の調子なんかも影響するので、そのあたりが難しいところです。自他は分けようと思っても分かれるものではありませんから、自分の全部を使って、相手を元気にしていくように頑張るしかないということだと思っています。

 

このあたりは私の個人的な意見です。

 

以下は私がなんかの本か論文に書いたときのものから抜粋しました。文章かたいですが、いちおうちゃんとチェックされた後のものなので参考にしてください。

 

 

記事作成

加藤 晃司

 

 

 

分離不安障害(Separation Anxiety Disorder:SAD)

分離不安障害は愛着対象から物理的に離れる,もしくは離れることをイメージすることに過剰な不安を抱き,癇癪,号泣,身体症状などを示すことを特徴としています。登園拒否や登校拒否はSADに共通する症状であり,SADの子どもの約75%が登校(園)拒否になっていると言われている。一般的に子どもは,愛着対象から見捨てられることや,離れることの恐怖に対して特に敏感である。このような不安・恐怖は通常は幼児期早期に強くなり,その後は3歳から5歳にかけて徐々に弱くなっていきます。しかし,子どもの数パーセントは愛着対象に“まとわりつく”行動によって不安の表出を続けたり,学校に最初に行くときに一時的に不安を示したりすることがありますが,存在してもそれらはごく軽度であるか,あるいは一時的なものであることが一般的です。一方,一度は上述したような標準的で生理的な不安が解消した後に,愛着対象からの分離に対する強い不安状態が生じることがあり,それがSADとして知られているものです。それらは上述した発達早期の不安とは質的に異なり,愛着対象から離れることを想像したり,実際に離れたりすることへの過剰な不安によって特徴づけられています。SADの発症の平均年齢は7.5歳前後であるといわれています。。

最近のSADに対する治療的アプローチでは,子どもや家族に対するCBT的介入を重要視しており,不登校が生じている場合には,脱感作や何らかの方法による学校への暴露が推奨されています。SADでは親,特に母親自身も同時に,子どもとの分離に少なからず不安を抱いていることが多いために,両親への認知行動療法や心理教育的アプローチが効果的です。さらに上記と並行して学校の担任教師や養護教諭との連携が必要であり,治療効果を高めることができのではないかと思います。SADは多くが低年齢であることや,治療への反応性が比較的高いことなどから薬物療法は推奨されていません。