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2023.04.27

世代間伝達について②、ひとつの例

世代間伝達について②、ひとつの例

ひとつ前のブログで、世代間伝達の話をしました。

世代間伝達の型は、似たような感じで伝達することもあれば、ちょっと形を変えつつも連続性がある、ということもあります。

まさに千差万別です。

境界性パーソナリティー(BPD)の例を少し出しましたが、分かりやすいので例を出します。

支配的で、感情の起伏が激しく、気分もむらがあり、0か100かの極端な考え方、のBPDらしい母親がいるとします

分かりやすい感じですね。

そうなると子どもの方が勘がよく、気が利くタイプだと、母親の感情や態度に合わせて自分の行動を変化させていくことが容易に想像できると思います。
顔色をうかがいまくる感じになるわけです。
すべからく、子どもたちは安定した母親が好き、なのです。これはどの気質の子どもでも、ある程度一貫しています。

母子逆転状態に、すぐになります。母親の方が成熟していない、状態になります。

こうなると、我慢強い子どもになりますが、母親が極端ですから、極端に我慢強い子どもになります。
そう簡単に誰かの手をわずらわせることはないでしょう。

思春期になってももちろん反抗期はでません。そんなことしたらお母さんの調子悪くなりますから。

で、そのまま大人になってしまうこともありますし、成熟した大人モデルの人に途中で出会うことがあれば、そこで自分を出す練習ができることもあります。
これは運がいい、ということです。
しかし最近は、希薄な人間関係の日本ですから、だいたいはそのようなラッキーは発生せず、そのまま大人になってしまうことが多いです。

大人になっても顔色を読みまくって、基本的には自分を抑え込んで、とうことをしていると、どこかで特に理由ないのに調子悪くなることがあります。
当たり前なのですが、精神的な元気さ、自我の風船みたいなものがあるとすれば、それはかなりしぼんでしまっている状態です。

ほんとに我慢強い人は、死ぬまでどこにもひっかからず、過ぎていく人もいるはずです。そういう方はクリニックにはもちろん来ないのですが、自分のプライベートでは見つけることができます。

気合が入っているので最後まで我慢できるのです。精神的な調子の悪さとは裏腹に、何か大きなことを達成するのもこういう方の時があります。我慢強さが桁違いですから、徹底的に努力とかもできるわけです。

何が正解か、分からなくなることがあります。

大変だった分だけ、自分が我慢した分だけ、後天的に獲得できる能力は間違いなく存在するからです。一つの力、と言えるでしょう。具合の悪さと引き換えにして得るものですが、自分で選んだわけではない、のでいいのか悪いのか、よく分からないのです。

つまり世代間伝達の話に戻しますと、世代間伝達はきっかけがなければ、そのまま伝達し、そして少しずつ悪くなっていくことが多い、ということです。

クリニックに本人がきたり、親がつれてきたり、知人や会社の人が連れてきたり、するケースは、そこで治療的介入がされるので、世代間伝達が一部解消される可能性あります。しかしまったく治療的なものには関わらずにすぎていく人たちも間違いなくいます。

私は自分のまわりで、生育歴が非常に大変だったから、現在の本人になんでもない人にはない強さ、能力、やさしさ、を持っている人を知っています。本人たちはそんなこと考えていないと思いますが、やはり何かを乗り越えてきた、サバイブしてきたものにしか獲得できない何かをもっていますし、大変だった分、人にやさしいな、と思います。

だからといって、大変なのがいいというわけではもちろんありません。とにかく、生育歴は、選べないわけですから。


加藤晃司