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自閉性スペクトラム障害(ASD)における対人相互性の障害とは何か?それにより生じる具体的な困難はどんなことがあるのか?名古屋の児童精神科医が解説
自閉性スペクトラム障害(ASD)における対人相互性の障害とは何か?それにより生じる具体的な困難はどんなことがあるのか?名古屋の児童精神科医が解説
こんにちは、名古屋市千種区 児童精神科専門クリニック、医療法人永朋会 和光医院、加藤晃司です。
今回は、自閉性スペクトラム障害(ASD)における対人相互性の障害とは何か?それにより生じる具体的な困難はどんなことがあるのか?について解説します。
自閉性スペクトラム障害(ASD)における対人相互性の障害とは、他者との社会的相互作用やコミュニケーションに関する特定の難しさを指します。ASDの人々は、この対人相互性の障害によって、日常生活や社会的な場面で多くの困難を経験することがあります。以下に、対人相互性の障害がどのようなものか、それにより具体的にどのような困難が生じるかを詳しく解説します。
- 対人相互性の障害とは?
対人相互性の障害は、ASDにおいて他者と円滑に意思疎通したり、共感し合ったりすることが難しいという特性です。具体的には、以下のような要素が含まれます:
非言語的コミュニケーションの理解が難しい:ASDの人は、表情、視線、ボディランゲージといった非言語的な合図を読み取ることが苦手です。また、他者が言葉以外の方法で伝えようとする感情や意図を理解することが難しいことが多いです。
相手の視点や気持ちを推測するのが難しい:ASDの人は、相手の視点を理解し、共感する能力(いわゆる「心の理論」)が弱い傾向にあります。そのため、他者がどう感じているかを予測したり、相手の立場に立って考えることが難しい場合があります。
社会的な規範を理解するのが苦手:ASDの人にとって、社会的なルールや慣習を理解し、それに従うことが難しいことがあります。たとえば、初対面の人との適切な距離感、挨拶の仕方、適切な話題の選び方などが分かりにくく、誤解を招くこともあります。
会話のタイミングや流れをつかむのが難しい:相手の話を聞きながら相槌を打ったり、自分が話すタイミングを見計らうことが苦手なことがあります。このため、会話がぎこちなくなり、相手との意思疎通がうまくいかないことがあります。
- 対人相互性の障害が引き起こす具体的な困難
対人相互性の障害により、ASDの人はさまざまな日常的な場面で困難を経験します。具体的な困難には次のようなものがあります。
- 友人関係の形成が難しい
対人相互性の障害によって、友人関係を築き、維持するのが難しいことがよくあります。人と接するときに適切な振る舞いがわからなかったり、相手の感情を理解できなかったりするため、誤解や距離を置かれてしまうことがあります。
また、相手に興味を示すことが苦手であったり、自分の好きな話題ばかり話してしまうため、相手が自分と関わりにくいと感じてしまうこともあります。
- 仕事や学校での人間関係に困難
社会的な場面でのルールが理解しにくいため、学校や職場での人間関係がぎこちなくなりやすいです。例えば、チームで協力しながら作業を進めることが苦手であったり、上司や先生など目上の人との適切な距離感が分からなかったりします。
会議や授業での発言のタイミングがわからず、話を遮ってしまったり、逆に適切なタイミングで話せず沈黙してしまうことがあり、誤解や評価に影響が出ることがあります。
- 感情の共有が難しい
他者との間で感情を共有したり、共感し合うことが難しいため、対人関係での深いつながりを築くことが難しいです。例えば、相手が悲しんでいるときにどう反応していいか分からず、結果的に冷たく見えてしまうこともあります。
ASDの人が何か困っていても、他者に伝えたり、助けを求めることが難しく、孤立しやすくなることもあります。
- 恋愛関係や家族関係における誤解や衝突
ASDの人は、恋愛や親しい友人、家族との関係においても、自分の感情を表現したり、相手の感情を理解することが難しいことがあります。このため、パートナーや家族との間に誤解が生じやすく、衝突が増える場合もあります。
特に、言葉以外の表現(ボディランゲージやニュアンス)を読み取ることが苦手なため、相手の気持ちに気づかないことが多く、不満を持たれることがあります。
- 公共の場での誤解やトラブル
公共の場での行動においても、対人相互性の障害はトラブルを招くことがあります。例えば、知らない人に距離を詰めすぎてしまったり、挨拶や礼儀を適切に行えないために、周囲に不快感を与えてしまう場合があります。
また、ASDの人は表情や動きに独特の特徴があることが多く、周囲の人から誤解されることも多いため、人前で緊張してしまう場合や、自信を失ってしまうこともあります。
- ASDにおける対人相互性の障害に対するサポート
対人相互性の障害を軽減するために、ASDの人に向けたサポートや支援もあります。次のような方法が効果的です:
ソーシャルスキルトレーニング(SST):社会的スキルを練習し、会話のタイミングや非言語的なコミュニケーションの理解を学ぶトレーニングです。SSTは、対人スキルを強化し、他者とよりスムーズに関わるための基礎を提供します。
感情理解トレーニング:他者の感情や表情、声のトーンを理解する練習を行い、社会的な場面でのスムーズな意思疎通を助ける支援です。視覚的な教材やシチュエーションごとのロールプレイが有効です。
環境調整とサポート:仕事や学校でのストレスを軽減するため、支援者が関係構築を手助けしたり、ASDの人に適した仕事や役割を与えるなど、環境を整えることが重要です。
カウンセリングや行動療法:心理士やカウンセラーとともにASDの人が日常生活の中で困難に直面している対人関係を改善するためのアプローチです。状況に応じて実践的な解決策を探ることができます。
まとめ
ASDにおける対人相互性の障害は、他者との社会的なつながりを築くうえで障害となるため、友人関係や仕事、家族・恋愛関係など、さまざまな日常生活で困難を引き起こします。しかし、ソーシャルスキルトレーニングやカウンセリング、支援者との協力を通じて、ASDの人も社会的スキルを改善し、対人相互性の向上を図ることが可能です。
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Social Reciprocity Impairments in Autism Spectrum Disorder (ASD): What They Are and the Challenges They Cause
Explained by Dr. Koji Kato, Director of Nagoya’s Eihoukai Wako Clinic
Hello, I’m Dr. Koji Kato, Director of Wako Clinic, a child psychiatry clinic in Nagoya. Today, I’ll explain the concept of social reciprocity impairments in Autism Spectrum Disorder (ASD) and the specific challenges they can cause.
- What Are Social Reciprocity Impairments in ASD?
Social reciprocity impairments in ASD refer to difficulties in engaging in smooth social interactions and communication. These impairments stem from challenges in interpreting and responding to social cues, making mutual interactions more complex. Key aspects of these impairments include:
- Difficulty Understanding Nonverbal Communication
ASD individuals often struggle to interpret facial expressions, eye contact, gestures, and body language.
They may not pick up on subtle emotional or social signals that others convey nonverbally.
- Challenges in Perspective-Taking and Empathy
ASD individuals may find it difficult to understand another person’s thoughts, feelings, or intentions—a concept known as “theory of mind.”
This can result in misunderstandings and difficulty predicting how others might react in social situations.
- Difficulty Understanding Social Norms
Social conventions, such as appropriate greetings, personal space, or conversational topics, can be challenging to grasp.
Misinterpreting or not adhering to these norms may lead to awkward interactions or misunderstandings.
- Trouble Following the Flow of Conversation
ASD individuals might struggle with knowing when to speak, listen, or interject during conversations.
They may interrupt, remain silent, or deviate to unrelated topics, leading to perceived disinterest or confusion.
- Specific Challenges Arising from Social Reciprocity Impairments
Social reciprocity impairments can lead to various difficulties in everyday life, such as:
- Forming and Maintaining Friendships
Difficulty understanding others’ feelings and interests can make it hard to establish connections.
ASD individuals may focus on their own interests without reciprocating social interaction, leading peers to feel disconnected.
- Navigating Relationships at School or Work
Group tasks and teamwork may be challenging due to a lack of understanding of group dynamics.
Misinterpreting social cues from superiors or peers can create misunderstandings and impact performance evaluations.
- Sharing and Responding to Emotions
ASD individuals might not know how to comfort someone who is upset or how to express their own feelings appropriately.
This can result in misunderstandings, making relationships seem one-sided or emotionally distant.
- Romantic and Family Relationships
Romantic partners or family members may misinterpret ASD-related behaviors as indifference or insensitivity.
Emotional disconnection or difficulty expressing affection can strain these close relationships.
- Public Misunderstandings or Conflicts
In public spaces, ASD individuals may unintentionally violate social norms, such as standing too close to others or not responding to greetings.
These behaviors can lead to misunderstandings or judgment from others, causing stress and social withdrawal.
- Support Strategies for Social Reciprocity Impairments
While social reciprocity impairments present challenges, targeted interventions and support can significantly improve social skills and reduce difficulties.
- Social Skills Training (SST)
Goal: Teach practical skills like understanding body language, maintaining conversations, and interpreting social cues.
Method: Role-playing and guided practice in controlled settings help build confidence and skills.
- Emotion Recognition Training
Goal: Help ASD individuals identify emotions in others through facial expressions, tone of voice, and gestures.
Method: Visual aids and scenarios are used to enhance understanding of social and emotional contexts.
- Environmental Adjustments
School and Work: Provide structured routines, clear expectations, and support in social situations.
Peers and Mentors: Engage with supportive individuals who can guide interactions in real-time.
- Therapeutic Approaches
Counseling: Work with therapists to develop strategies for managing social challenges.
Behavioral Interventions: Address specific behaviors that may hinder social interactions through positive reinforcement and practice.
- Family and Community Support
Educate family members, teachers, and colleagues about ASD to foster understanding and patience.
Create opportunities for ASD individuals to participate in structured group activities that encourage social engagement.
- Conclusion
Social reciprocity impairments in ASD encompass challenges in understanding and participating in mutual social interactions, often leading to difficulties in friendships, work, and family relationships. However, with appropriate support, including social skills training, emotion recognition programs, and tailored interventions, individuals with ASD can enhance their social capabilities and navigate relationships more effectively.
Addressing these challenges requires not only individualized support for the person with ASD but also creating an environment of understanding and inclusion within their community.
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