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場面緘黙症(選択性緘黙)とは?家では話せるのに園や学校で話せない子どもへの理解と支援
場面緘黙症(選択性緘黙)とは?家では話せるのに園や学校で話せない子どもへの理解と支援
「家族とはよくおしゃべりするのに、幼稚園や学校では一言も話さない」 「先生に名前を呼ばれても返事ができず、うなずくだけ」 「家では明るいのに、外では固まったように動けなくなる」
こうしたお子さまの姿に、「人見知りが強いだけ」「そのうち慣れるだろう」と様子を見ているご家庭は少なくありません。しかし、特定の場面だけ話せない状態が続いている場合、**場面緘黙症(ばめんかんもくしょう/選択性緘黙)**という不安症の一つである可能性があります。
名古屋市千種区の児童精神科・和光医院では、場面緘黙のお子さまとご家族のご相談を承っています。この記事では、場面緘黙症の特徴や原因、ご家庭・学校でできる関わり方、医療機関に相談する目安について解説します。
場面緘黙症(選択性緘黙)とは
場面緘黙症とは、言葉を話す力は十分に備わっているにもかかわらず、特定の社会的状況においてだけ話すことができない状態が続くものを指します。診断基準であるDSM-5-TRでは「選択性緘黙」と呼ばれ、**不安症群(Anxiety Disorders)**に分類されています。
ここで大切なのは、「選択性」という名前がついていても、お子さまが自分の意思で話さないことを選んでいるわけではないということです。強い不安によって声が出なくなってしまう、いわば「体が固まってしまう」反応であり、わがままや反抗ではありません。
主な特徴
- 家庭では家族と普通に会話できる
- 園・学校・習い事など、特定の場面では声が出ない
- 話せない状態が1か月以上続いている(入園・入学直後の1か月は除く)
- 言語発達そのものには大きな遅れがない
- 話せないことで、学習や友人関係、学校生活に支障が出ている
どのくらいの子どもにみられるのか
場面緘黙症の有病率は0.2〜0.5%程度と報告されており、決して珍しいものではありません。500人規模の小学校であれば、1〜2人はいる計算になります。発症は2〜5歳頃が多く、集団生活が始まる幼稚園・保育園への入園や、小学校入学のタイミングで周囲が気づくケースがほとんどです。男児より女児にやや多い傾向があるとされています。
「静かでおとなしい子」として見過ごされやすい
場面緘黙のお子さまは、教室で騒いだり暴れたりすることがないため、「手のかからない、おとなしい子」として支援につながらないまま年月が過ぎてしまうことが少なくありません。実際、症状が始まってから専門機関に相談するまでに数年かかるケースも多く報告されています。
しかし、話せない状態が長く続くと、次のような二次的な困りごとにつながることがあります。
- 授業での発表・音読・グループ活動に参加できず、学習機会が失われる
- 友人関係を築きにくく、孤立感が強まる
- 体調不良やトイレに行きたいことを伝えられない
- 「話せない自分」への自信のなさが積み重なる
- 思春期以降、社交不安症やうつ症状へ発展する
早い段階で適切な理解と支援が得られるほど、改善しやすいことがわかっています。「そのうち慣れる」と待つのではなく、早めにご相談いただくことが大切です。
場面緘黙症の原因
場面緘黙症は、一つの原因で起こるものではなく、複数の要因が重なって生じると考えられています。
1. 不安になりやすい気質
生まれつき、新しい環境や人に対して慎重で、緊張しやすい気質(行動抑制的気質)を持つお子さまに多くみられます。
2. 環境の要因
入園・入学、転校、引っ越しなど、環境が大きく変わったタイミングで症状が現れることがあります。
3. 発達特性の併存
自閉スペクトラム症(ASD)や、言語発達の課題、吃音(きつおん)などが背景にある場合もあります。二言語環境で育っているお子さまに一時的にみられることもあります。
注意していただきたいのは、「親の育て方が悪い」「愛情不足」といったことが原因ではないという点です。 保護者の方がご自身を責める必要はまったくありません。
ご家庭でできる関わり方
◎ 心がけたいこと
話すこと以外の表現手段を認める うなずき、指さし、筆談、カードなど、伝える手段はいくつあっても構いません。「伝わった」という成功体験が自信につながります。
話せた場面を大げさに褒めすぎない 「話せたね!」と強く注目されると、かえってプレッシャーになり、次から話しにくくなることがあります。さりげなく受け止めるくらいがちょうどよいバランスです。
安心できる場を少しずつ広げる まずは家庭で、次に家族+仲の良い友達1人、というように、話せる相手や場所をスモールステップで広げていきます。急がず、お子さまのペースを尊重してください。
得意なことや好きなことを伸ばす 絵、工作、運動、生き物の世話など、言葉を使わずに力を発揮できる場面は、自己肯定感を支える大切な柱になります。
× 避けたい対応
- 「なんで話さないの?」と理由を問い詰める
- 人前で無理に話させようとする
- 「話せないと〇〇できないよ」と条件をつける
- きょうだいや他の子と比べる
- 本人の目の前で「この子は話せないんです」と説明する
いずれも不安を強め、症状を長引かせる要因になり得ます。
学校・園との連携
場面緘黙の支援では、医療・家庭・学校の三者が同じ理解を共有することが何より重要です。和光医院では、必要に応じて学校・園の先生方に向けた情報提供や、支援方法のご相談も行っています。
学校側にお願いしたい配慮の例としては、次のようなものがあります。
- 出席確認は挙手やカードでの応答を認める
- 音読や発表は、少人数の場・録音・筆記など代替手段を用意する
- 無理に発言を促さず、「話さなくてもよい」安心感を保証する
- トイレや体調不良を伝えるためのサインやカードを決めておく
- 「話せるようになったか」ではなく「参加できているか」で評価する
治療・支援の進め方
和光医院では、まずお子さまとご家族から丁寧にお話を伺い、これまでの経過や園・学校での様子、併存する発達特性や不安の程度を確認したうえで、支援方針を一緒に考えていきます。
行動的アプローチが中心
場面緘黙の支援では、不安の低い場面から段階的に慣れていく行動療法的アプローチが中心となります。安心できる相手・場所から少しずつ範囲を広げていく方法や、話せる場面を録音・オンラインなどを活用して橋渡しする方法など、お子さまの状況に応じて組み立てます。
環境調整
本人が変わることを求める前に、まず周囲の環境を整えることが出発点です。学校での配慮の調整、家庭での関わり方の見直しを行います。
薬物療法について
場面緘黙症そのものに対して、最初から薬を使うことはありません。ただし、不安の強さが著しく、生活に大きな支障が出ている場合や、思春期以降で社交不安症を併存している場合などには、抗不安作用のある薬剤の使用を検討することがあります。その際は、必要性・効果・副作用について十分にご説明し、ご家族と相談のうえで慎重に判断いたします。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 人見知りとの違いは何ですか? A. 人見知りは新しい環境に慣れるにつれて自然に和らいでいきますが、場面緘黙は入園・入学から1か月以上経っても、特定の場面で全く話せない状態が続く点が異なります。また、話せないことで学習や生活に支障が出ているかどうかも判断の目安になります。
Q. 何歳から相談できますか? A. 年齢の制限はありません。園で話せない様子が気になり始めた3〜4歳の段階でのご相談も歓迎しています。むしろ、早い時期にご相談いただくほど支援の選択肢が広がります。
Q. 成長すれば自然に治りますか? A. 自然に軽快するお子さまもいますが、支援がないまま長期化すると、社交不安症やうつ症状につながることがあります。「待つ」よりも「働きかける」ほうが改善につながりやすいと考えられています。
Q. 診察で本人が話せなくても大丈夫ですか? A. まったく問題ありません。当院では、お子さまが話さなくても診察が進むよう配慮しています。筆談やうなずき、保護者の方からのお話をもとに丁寧に評価いたしますので、安心してお越しください。
Q. 発達障害と関係がありますか? A. 自閉スペクトラム症(ASD)や不安症などを併存している場合があります。当院では、背景に発達特性があるかどうかも含めて総合的に評価し、それぞれのお子さまに合った支援をご提案しています。
おわりに
場面緘黙のお子さまは、「話したくない」のではなく、**「話したいのに話せない」**という苦しさを抱えています。その気持ちが周囲に理解され、安心できる環境が整うことで、少しずつ声を取り戻していくお子さまをたくさん見てきました。
「うちの子はただの恥ずかしがり屋かもしれない」と迷われている段階でも構いません。気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
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子どものためのメンタルクリニック|医療法人永朋会 和光医院
診療科目: 児童精神科・精神科・心療内科
発達障害(ASD・ADHD)、不登校、起立性調節障害、不安症、パニック症、チック症、強迫症、うつ症状など、お子さまから成人の方まで幅広く診療しております。
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