2023.08.11ブログ
境界性パーソナリティー障害と発達障害の合併について②
境界性パーソナリティー障害と発達障害の合併について②
BPDとPDDの合併についての続きです。 PDDといっても、対人相互性の障害が強すぎたら、細かなすれ違いが逆に起きないのではないかと思います。
私が経験した症例でも、PDDNOS、程度の診断がつく人しかいませんでした。 つまり対人相互性の障害はあるものの、情緒交流、愛着形成は欠如していない、という状態です。
しかし母親との関係の少しのずれが、長年つみかさなっていくと、修正できないくらいのずれ、となってしまうことがあるということです。 有業率的にもPDDは男性優位ですから、BPDで問題となってくる、女性の場合、注意していないとPDDを見逃す可能性はあります。 実際、私も最初見逃していたケースがいくつかありました。
しばらく治療が進んでくると、本人、母親、どちらのこともよく分かってくると、あれっ、典型的なBPDの生育歴ではないし、二人の関係も不認証環境じゃないな、ということに気がつくわけです。 その違和感をうめるピースが、PDD、ということになります。 PDDは、日本では児童精神科が診察することが多い疾患なので、PDDNOSとなると、なかなか一般精神科外来では見逃されていることが多いと思います。
自傷行為、自殺企図、などの既往歴があり、そして繰り返されていると、BPDの診断にひっぱられますが、本質的問題がBPDの中になければ、たとえ診断がついていたとしても、改善する可能性は低くなります。 本人の対人相互性の障害は生来のものなので機能的な改善はしないですが、自分にそのような苦手さがある可能性があることを理解し、その上で母親との関係を再度見直す機会があれば、本人の記憶の中で確定していた過去を上書きすることができる可能性はあります。 また母親も、なぜこの子は理解してくれないのだ、と思っていた原因がはっきりすることで、まず母の肩の荷がありることが重要です。多くの方が自分が悪かったのではないかと思っています。
そのうえで、本人との関わり方を、再構築することができれば、家族の本人への支持機能はかなり高まるはずです。 PDD+BPD 10例いかないくらいだと思いますが、割と経験した方だと思います。 診断がつくまでに時間がかかったという意味でも、私の中では印象に残っています。 また東海大学で児童精神科やりながら、救命救急センターリエゾンやらなければ、巡り会うこともなかったかもしれません。 あまりに印象的だったので、症例広告という形で論文にもしています。 研究報告 思春期境界性パーソナリティ障害,広汎性発達障害合併例に対する
自殺再企図防止のためのアプローチ 臨床精神医学第45巻第11号 発行日:2016年11月28日 https://arcmedium.co.jp/products/detail.php?product_id=1113 医療法人永朋会 理事長 加藤晃司