児童精神科のご案内(児童・思春期)
児童精神科では15歳以下の子どもが対象となります。
児童・思春期におこりやすい症状には次のようなものがあります。
- やる気が出ない
- いらいらする
- 勉強や授業に集中できない
- 急に気分が落ち込む、不安になる
- いつも眠い
- 夜寝れない
- 忘れ物が多い、スケジュール管理が苦手
- 場の空気が読めない
- なんとなく不安、恐怖感がある
- 人前に出ると緊張し、動悸がする、息苦しい
- 突然息苦しくなる、動悸がする、めまいがする
- 人目が気になる
- 何度手を洗ってもきれいではない気がする
- 食べ過ぎてしまう、食べれない、吐いてしまう、自傷行為
子どもでは大人と比べると、非典型的な症状を表すことがあります。
上記のような症状が一時的ではなく継続して認められるときは、すでになんらかの疾患の症状として出現している可能性があるので一度ご相談ください。どの病気もそうですが、早期に発見し、早期に治療することでその後の経過も良好になります。
※なお、このページで出てくる診断はアメリカ精神医学会が作成している「DSM-IV-TR」という診断基準を使用しています。
次に、児童・思春期に認められやすい精神疾患について説明します。どの疾患にも好発年齢というものがあり、以下の疾患は児童から思春期にかけて問題となりやすい疾患です。
- 広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー)
- 注意欠如多動性障害(ADHD)
- 統合失調症
- 摂食障害
- チック障害、トゥレット障害
- 強迫性障害
- 睡眠障害:夜驚症など
- 学習障害
- うつ病
- 社交不安障害
- 全般性不安障害
- パニック障害
- 適応障害
もちろん疾患はこれだけではありませんが、このページでは代表的ないくつかの疾患について簡単に説明させていただきます。
ADHD、広汎性発達障害以外の疾患については、【心療内科・精神科のご案内】ページで説明しています。
広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders: PDD)
例えばこんなことで困っていますか?
- 静かにしていなくてはならない場所(講義中など)でも、関係ないことを急に大声で話し出す
- こちらの質問の意図とは違った答えを返してくる
- 集団行動が取れずいつも周囲と溶け込めない
- 自分の興味があることは一方的に話をするが、こちらの話は聞いているかどうかよくわからない
もしかしたら広汎性発達障害の疾患特性からこれらの問題が出ているかもしれません。
1. 広汎性発達障害とは
- 自閉性障害:Autistic Disorder
- アスペルガー障害:Asperger’s Disorder
- 特定不能の広汎性発達障害:PDD Not Otherwise Specified
- (レット障害:Rett’s Disorder)
- (小児期崩壊性障害:Childhood Disintegrative Disorder)
広汎性発達障害とは広い疾患概念であり、上記の疾患が広汎性発達障害に含まれます。
2. 広汎性発達障害の特徴
DSM‐Ⅳにおいては下記の3つの特徴で診断します。
※難しい言葉ですが、診断基準にもそのまま記載されている大事な表現なのでそのまま書かせていただいています。
1)社会的相互交流の障害(対人的相互反応の質的な障害)
他者と上手く交わることができない。他者の心の理解が苦手である。場の空気を読むことができない。会話がずれてしまう。
2)社会的コミュニケーションの障害
非言語的なコミュニケーションが不得手。言葉を字義通りにとらえてしまう、ジェスチャーの理解が苦手。話し言葉での指示は苦手であり、視覚的な指示の方が理解しやすい。
3)社会的想像力と柔軟な思考の障害
知識の応用が苦手、特定のものへの驚くほどの熱中。現実の生活での想像力の欠如。
これをやったら→こうなる、のような少し先の予測が苦手。突然のスケジュール変更でパニックになってしまう。
広汎性発達障害の中核症状は(1)の社会的相互交流の障害です。その他はある子どももいれば、ない子どももいます。
広汎性発達障害と診断がつくことで、小さい子どもであれば疾患特性に合わせた治療教育を行うことができます。また子どもの特性に合わせて園や学校で環境調整をすることが可能となります。さらに周辺症状で、多動、かんしゃく、いらいら、集中力低下、不眠、などは治療である程度改善する場合もあります。
上記のような特性にあてはなることがあり、自宅や学校のみでは解決できない場合には一度ご相談ください。
注意欠如多動性障害(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder: ADHD)
ADHDも子どもで問題になることが多い疾患であり、この疾患は多動、衝動性、不注意が主症状であり、これらの症状があると幼児期より怒られることが多く、自己評価が非常に低くなってしまっている場合が多いです。
少しでもこの疾患を疑わせる所見がある場合には、早めにご相談ください。保険適応となっている内服での治療も可能です。また治療教育も有効な場合があります。
1. ADHDの疾患特性(学童期のADHDの子どもの特徴)
- 授業中の立ち歩き
- ちょっとしたことでむきになり口より先に手が出てしまう
- 注意転動性亢進により課題を達成できない
- やるべき課題にぎりぎりまで取り掛かれない
- 周囲の状況がつかめず友達と上手く遊べない
- 要領が悪い
- 忘れ物が多い
- 衝動性
- 引っ込み思案
このようなことで困っている場合、ADHD症状の可能性があります。
2. ADHDの診断基準(DSM-IV-TRでの診断基準)
- 不注意の項目、または衝動性−多動性の項目がそれぞれ6項目以上(不注意優勢型、多動−衝動性優位型、混合型)
- 多動性−衝動性または不注意の症状のいくつかが7歳以前に存在し、6ヶ月以上持続している
- これらの症状による障害が2つ以上の状況(ex.学校と家庭)において存在する
大事なことは、7歳以前から存在し、それらの症状は現在まで継続していることです。また自宅、学校、その他の場所を含め、複数の場所で問題となっている必要があります。