2024.02.10ブログ
強迫性障害の診断と治療、特に治療をスタートするタイミングは重要
強迫性障害の診断と治療、特に治療をスタートするタイミングは重要 今回は強迫性障害の診断と治療、特に治療をスタートするタイミングについて解説します。 強迫性障害の好発年齢は、思春期から青年期にかけてです。 児童精神科外来をやっていると、まあまあの頻度で遭遇します。 名古屋で児童精神科をスタートしてからも多くの患者さんが来られました。 しかし強迫症状は病態水準が悪い子の場合は、悪化前の前駆症状として出現する可能性があるので、その評価が終わってからでないと治療はスタートできません。 例えば、統合失調症の前駆症状だった場合、強迫性障害の内服をスタートすると統合失調症を増悪させる可能性があるからです。 ①強迫性障害の診断 まずは強迫性障害の診断について解説します。 強迫性障害(OCD: Obsessive-Compulsive Disorder)は、反復的な強迫観念(不合理な思考やイメージ)と強迫行為(これらの思考を中和しようとする行動や精神的な儀式)に特徴づけられる精神障害です。この障害の診断と治療は複雑であり、患者一人ひとりに合わせたアプローチが必要です。 診断 強迫性障害の診断は主に臨床面接と患者の自己報告に基づいて行われます。以下の基準が考慮されます: 強迫観念: しつこい、不要な、不快な思考、イメージ、衝動。 個人はこれらの思考を無視するか、何らかの行動や心の中での儀式によって中和しようとします。 強迫行為: 一定のルールに従って繰り返される行動(例:手洗い、数える、物を一定の順序で確認する)。 これらの行為は、不安やストレスを減らすことを目的としていますが、実際には不合理で過度なものが多い。 時間的要因: 強迫観念や強迫行為にかかる時間が1日1時間以上、または顕著な苦痛や日常生活の障害を引き起こしている。 苦痛や機能障害: 障害が社会的、職業的、または他の重要な機能領域での正常な活動を妨げる。 他の精神障害によるものでない: 症状が他の精神障害(例:抑うつ障害、不安障害)の結果ではないこと。 このように強迫性障害の診断では、強迫観念、強迫行為、この二つがそろうことが重要です。 強迫に関して、自我違和性、症状自体が馬鹿げたことであると認識できていることが必要です。 つまりぴったり症状がフィットしている場合、それは自我親和性がある、ということになり、強迫性障害ではないのです。 ②治療 次に治療について解説します。 治療 強迫性障害の治療には一般的に以下の方法が用いられます: 認知行動療法(CBT): 特に「露出と反応妨害(ERP)」が効果的。 患者は強迫観念に直面し、それに対する反応(強迫行為)を避けることを学びます。 薬物療法: 主に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRIs)が処方されます。 これらの薬は強迫観念や強迫行為に関連する不安や衝動を減らすことができます。 組み合わせ療法: 多くの場合、CBTと薬物療法の組み合わせが最も効果的です。 その他の治療: 重症の場合や他の治療法が効果を示さない場合、他の治療法(例:深部脳刺激療法)が検討されることもあります。 注意点 強迫性障害の治療は個人によって異なるため、治療計画は患者の特定の症状やニーズに合わせて調整されるべきです。 治療の進行には時間がかかることがあり、患者と治療提供者の間の良好なコミュニケーションが重要です。 定期的なフォローアップと治療の再評価が必要な場合があります。 強迫性障害は複雑で長期的な治療が必要な場合が多いですが、適切な治療を受けることで、多くの患者は症状の管理と日常生活の質の向上を達成することができます。 一般的な強迫性障害の治療はこれでいいです。 日常生活に支障がでていたら、子どもであったとしても、SSRIの内服は最初から考慮していきます。 ですが、先ほど書いたように、病態水準が悪い場合、統合失調症の前駆症状のような形で強迫症状がスタートしている可能性があります。 病態水準が精神病圏にあるのかどうかは、生育歴を聞いて、そして現症をみて、見極めていくしかありません。 まとめ 今回は強迫性障害の診断と治療についてまとめました。 そして強迫性障害の治療のタイミングは、病態によっては慎重に決めなくてはいけません。 統合失調症の前駆症状として強迫性障害を認めていたケースは、児童精神科外来では私は少なからず経験しました。 しかも強迫を前駆症状とするケースの方が、統合失調症の通常のパターンより、急速に増悪した印象です。 だから強迫性障害の内服をもし使うなら、SSRI、その中でも効果の弱いものを少量からスタートしていました。 認知行動療法も病態水準が悪い子にやると、悪化させる可能性があるので、心的負荷の強い治療は選択しませんでした。 強迫はどちらにしても、児童精神科の中では重たい症状の部類に入ります。 少しでも気になる症状が出ている場合は、早めに受診するようにしてください。