2024.07.27ブログ

今回は、境界性パーソナリティ障害の不認証環境とは何か、について解説します。

今回は、境界性パーソナリティ障害の不認証環境とは何か、について解説します。


まずは一般論から、

境界性パーソナリティ障害(BPD)における「不認証環境」(invalidating environment)とは、個人が成長する過程で経験する、自己の感情や認識が否定されたり、無視されたりする環境のことを指します。この概念は、特にBPDの発達において重要な役割を果たすとされています。

(1)不認証環境の特徴
不認証環境は、以下のような特徴を持ちます。

感情の否定: 個人が表現する感情や体験が、周囲から否定され、正当なものとして認められない。
過度な期待: 個人に対し、年齢や発達段階に不釣り合いな期待を持つことで、自己効力感の低下を招く。
コミュニケーションの欠如: 家族や育成者との間で健全な感情表現やコミュニケーションが不足している。
問題解決の欠如: 個人が直面する問題に対して、適切な対処方法やサポートが提供されない。
不認証環境がBPDに与える影響
不認証環境で育った個人は、自分の感情や欲求を適切に理解し、表現することが困難になることがあります。これは、BPDの典型的な特徴である感情の不安定性、自己像の曖昧さ、人間関係の問題などにつながると考えられています。

(2)対応策
不認証環境による影響に対処するためには、以下のようなアプローチが有効です。

認知行動療法(CBT): 不健全な思考パターンを認識し、修正することを目指します。
弁証法的行動療法(DBT): 感情の調節、対人関係スキル、ストレス耐性など、具体的なスキルを教えることに焦点を当てた療法です。
支持的環境の構築: 安全で肯定的な関係を築き、感情の正当性を認める環境を提供します。

境界性パーソナリティ障害は、この不認証環境という生育歴、と、もともとの本人の気質(易刺激性、気分易変性)が組み合わされることで成立する疾患です。

不認証環境がないのにBPDになることはない、と言い切っていいと思います。

もちろん程度の差はあると思います。

ですがこの不認証環境があったことと養育者から生育歴を振り返ることでそれを見つけ、それが現在まで連続しているということを本人、可能なら養育者が気が付くことが重要です。

養育者は子供の場合は一緒にきてくれることもありますが、成人した方の場合、養育者との関係が疎遠になっていることも多く、本人からのみ生育歴を振り返ることもよくあります。

不十分ですが、そのあたりはしょうがない。
あるものを使って治療はやっていくしかありません。

BPDの人は、自分は存在していいんだ、愛されていいんだという、基本的信頼感の形成がうまくされていません。
基本的信頼感は幼児期に養育者との関係の中で作られるので、それを大人になってから獲得するのはかなり困難です。
だからそういうものが通常は存在しているが、自分にはそれがうまく形成されていない、ということを認識することで、なぜ自分がいまこのような状態になっているのかを理解していくことができる、それだけでも意味があります。

もちろん少しずつですが、他人との関係のなかで基本的信頼感のようなものが形成されていくことはあります。

時間はかかりますが、生育歴の一部をやりなおしていく作業が治療では求められます。
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