2025.07.24ブログ
ADHDの治療薬「インチュニブ」について神奈川県厚木市 児童精神科専門 きもとメンタルクリニックより
ADHDの治療薬「インチュニブ」について
神奈川県厚木市 児童精神科専門 きもとメンタルクリニックより
こんにちは。
今回は、ADHD(注意欠如・多動症)の治療薬のひとつである「インチュニブ®」について、保護者の方にもわかりやすくご紹介いたします。
インチュニブとは?
インチュニブ®(一般名:グアンファシン徐放錠)は、ADHDの子どもに使われるお薬のひとつで、2017年に日本で承認された比較的新しい治療薬です。6歳~17歳のADHD児に使用が認められており、2023年からは成人への適応も拡大されています。
多くのADHD治療薬が「刺激薬」と呼ばれるタイプなのに対し、インチュニブは非刺激薬という分類に属しており、脳の神経伝達を穏やかに整えるタイプのお薬です。
インチュニブの特徴と作用機序
インチュニブは、脳の「前頭前野(集中・思考・行動をコントロールする部位)」にあるα₂A受容体に作用し、神経の情報伝達をスムーズにしてくれます。
これにより、
注意の持続
衝動の抑制
多動の軽減
といったADHDの主要症状に対して効果を発揮します。
また、メチルフェニデート製剤(コンサータ®など)やアトモキセチン(ストラテラ®)とは異なる作用機序のため、他の薬で効果が乏しい場合や副作用が強い場合の選択肢としても有効です。
インチュニブのメリット
① 1日1回の服用でOK(朝または就寝前)
② 依存性がない
③ 刺激薬で起こりがちな食欲不振や不眠が少ない
④ イライラ・攻撃性・不安感にも有効なことがある
⑤ チック症状や不安傾向のあるお子さんにも比較的使いやすい
副作用と注意点
インチュニブは穏やかに効く反面、以下のような副作用が出ることもあります。
眠気、だるさ
血圧の低下、立ちくらみ
徐脈(心拍が遅くなる)
頭痛、吐き気、便秘
特に眠気や血圧の低下は、服薬開始後2週間前後に見られることが多く、投与初期はゆっくりと増量することが大切です。
また、心拍や血圧のモニタリングのために、定期的な通院が必要です。
投与の方法
インチュニブは1mgから開始し、週に1回ずつ0.5mgまたは1mgずつ増量していきます(最大は4~6mgが一般的)。
服薬のタイミングは個々のお子さんによって異なりますが、日中に眠気が出る場合は、夜の服用が選ばれることもあります。
和光医院での治療の進め方
和光医院では、お子さまの症状や生活状況を丁寧にお聞きした上で、以下のような流れで治療を進めています。
初診・診断
発達歴や行動観察、必要に応じて心理検査を行います。
治療の選択
薬物療法の必要性がある場合は、インチュニブを含めた複数の選択肢をご説明し、ご家庭と相談して決定します。
投薬開始とフォローアップ
少量からスタートし、副作用や効果を見ながら定期的に調整を行います。心拍や血圧も確認します。
学校やご家庭との連携
必要に応じて、学校との情報共有や支援のご相談も対応しています。
最後に
インチュニブは、ADHDのお子さまにとって**“刺激薬が合わない”“穏やかに改善を目指したい”**というご家庭にとって、有効な選択肢のひとつです。
副作用や効果の現れ方には個人差がありますので、主治医としっかり相談しながら進めることが大切です。
当院では、お子さま一人ひとりに合った治療を心がけ、ご家庭と連携しながらサポートしております。ADHD治療について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。