2026.01.08ブログ

ASDの感覚過敏にADHDが影響している可能性はある?ADHD治療で感覚過敏は改善する?

ASDの感覚過敏にADHDが影響している可能性はある?
ADHD治療で感覚過敏は改善する?

――神奈川県厚木市・児童精神科専門クリニック きもとメンタルクリニック――

「教室のざわざわがつらくて入れない」
「服のタグや靴下の縫い目が痛くて泣いてしまう」
「光がまぶしくて頭が痛い」

ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんでは、こうした感覚過敏が日常生活に大きく影響することがあります。
そして実際には、ASDだけでなくADHD(注意欠如・多動症)を併存しているケースも少なくありません。

保護者の方からは、
「感覚過敏が強いのはADHDも関係している?」
「ADHDの治療をすると過敏さも軽くなる?」
といったご相談がよく寄せられます。

結論として、
ASDの感覚過敏に、ADHDの特性が“上乗せ”されて困りごとが強く見えることはあります。
また、ADHD症状が整うことで、感覚過敏による困りごと(パニック・回避・疲れやすさ)が軽くなる可能性もあります。
ただし、感覚過敏自体が完全に消えるとは限らず、環境調整・スキル支援・本人の特性理解とセットで考えることが大切です。

1. 「感覚過敏」がつらくなる仕組み:脳の“処理負荷”という視点

感覚過敏は「刺激そのものが強すぎる」だけでなく、脳が刺激を処理する過程で

重要でない刺激を“除外”しにくい

複数の刺激が同時に入ると“混線”しやすい

予測できない刺激への警戒が高まりやすい

といった特徴が重なって、脳の処理負荷(オーバーロード)が上がることで起こりやすくなります。

ASDのお子さんではこの“処理のクセ”が強いことがあり、感覚過敏が目立ちやすくなります。

2. ASDの感覚過敏にADHDが影響する可能性:ポイントは「刺激の量」と「回復力」

ASDの感覚過敏にADHDが合併すると、過敏さが強く見える理由は大きく2つです。

2-1. ADHDの「注意の切り替え・選別」が苦手で刺激が“増える”

ADHDがあると、脳の中で
「今は先生の話に集中する」
「周囲の雑音は無視する」
といった**刺激の選別(フィルタリング)**がうまくいきにくいことがあります。

結果として、本人にとっては

時計の音

机をこする音

隣の人の動き

蛍光灯のちらつき

服のチクチク
が“全部同じ強さ”で入ってくる感覚になり、過敏反応が起こりやすくなります。

2-2. ADHDの「衝動性・行動の制御」が弱いと反応が大きくなる

感覚がつらい瞬間に

叫ぶ

逃げる

物を投げる

先生や親に強く当たる
など、反応が急激に出ることがあります。

これは「わがまま」ではなく、刺激による不快感+衝動性でブレーキが効きにくい状態と考えられます。

2-3. ADHDの「回復の遅さ(疲労の残りやすさ)」が過敏を長引かせる

感覚過敏は、体調・睡眠・疲れで強くなります。
ADHDがあると、

睡眠リズムが崩れやすい

頭が休まりにくい

1日の疲労が蓄積しやすい

などが起こり、翌日も刺激に弱い状態が続くことがあります。
「夕方になると過敏がひどくなる」タイプは、この影響が強いことがあります。

3. ADHD治療で感覚過敏は改善する?:改善しやすいのは「困りごとの部分」

ADHD治療で期待できる改善は、感覚過敏そのものがゼロになるよりも、

刺激の“受け止め方”が少し楽になる

パニック・回避・癇癪が減る

回復が早くなる

疲れにくくなる
といった生活上の困りごとが軽くなる形です。

3-1. なぜ改善が起こり得るのか

ADHDへの支援(環境調整/行動支援/必要に応じた薬物療法)によって、

注意の焦点が定まりやすくなる

反応のブレーキが効きやすくなる

感情の爆発が減りやすくなる

生活リズムが整い、疲労が減る

失敗体験が減り、安心感が増える

などが起こると、刺激のつらさに対する耐性・対処力が上がります。

3-2. 変化として見えやすい例

イヤーマフを使えば教室にいられる時間が伸びる

「うるさい!」と爆発する前に先生に伝えられる

逃げても立て直しが早く、復帰できる

服の不快感があっても“切り替え”が少しできる

帰宅後の癇癪が減る(疲労が減る)

3-3. 改善しにくい場合もある

感覚過敏がASD特性として非常に強い場合、ADHD治療だけでは変化が小さいこともあります。
その場合でも、次の章のような環境調整とスキル支援で生活が大きく改善することは多いです。

4. きもとメンタルクリニックが考える:感覚過敏は「減らす」より「設計し直す」

感覚過敏への対応は、根性で慣らすより、つらさを減らす設計が現実的です。

4-1. 刺激を減らす(環境調整)

聴覚:イヤーマフ/席の調整/雑音が少ない場所へ
視覚:照明・席の変更/帽子/タブレットの明るさ調整
触覚:タグカット/縫い目が少ない衣類/素材の統一
嗅覚:香りの強い場面の回避/換気

4-2. 刺激が来たときの「逃げ方」を決める

クールダウン場所を決めておく

「合図カード」「一言フレーズ(休憩します)」を練習

逃げた後に戻る手順まで“見える化”

「逃げてもいい。でも戻れる道筋がある」ことが、本人の安心感を作ります。

4-3. 予測可能にする(見通し支援)

ASDでは「予測できない刺激」が大きな負担です。

予定表の見える化

変更がある日は事前に説明

“どこまで頑張るか”を時間で区切る
だけでも過敏反応が軽くなることがあります。

5. 受診・相談の目安:背景の整理が鍵

次のような場合は、ASDだけでなくADHDの影響も含めて評価すると支援が進みやすくなります。

感覚過敏で登校が難しい/授業参加が困難

パニック、回避が強い

夕方に癇癪が増える(疲労で悪化)

「聞けない」「落ち着けない」が目立つ

睡眠リズムが乱れている

ASDとADHDが併存していると、困りごとの構造が複雑になります。
どこがASD由来で、どこがADHD由来の“上乗せ”かを整理することで、対応が具体的になります。

まとめ

ASDの感覚過敏にADHDが影響して、困りごとが強く見えることはある

ADHDの特性(注意の選別の苦手さ/衝動性/疲労の残りやすさ)が、刺激への耐性を下げることがある

ADHD治療で、感覚過敏の“困りごと”(パニック・回避・疲労)が軽くなる可能性がある

ただし感覚過敏自体が完全に消えるとは限らないため、環境調整・見通し支援・逃げ方の設計が重要

神奈川県厚木市のきもとメンタルクリニックでは、
感覚過敏を「我慢させる」方向ではなく、背景(ASD/ADHD/睡眠/不安)を整理し、
家庭・学校で実行できる形に落とし込んだ支援を大切にしています。
お子さんの困りごとが続く場合は、どうぞお気軽にご相談ください。
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