2024.03.27ブログ
大変だった生育歴は、大人になった時に必ず役に立つ時がくる
大変だった生育歴は、大人になった時に必ず役に立つ時がくる 今回は、大変だった生育歴は、大人になった時に必ず役に立つ時がくる、というテーマで書きます。 児童精神科をやっていると、多くの子どもたちの生育歴、つまり0歳から現在までの育ってきた道のりを確認することになります。 過酷な生育歴の子どもも少なからずいますから、そういう子たちが大人になっていく経過もみることになります。 例えばボーダーライン傾向がある養育者に育てられれば、適切にほめられることはなく、子どもは常に養育者の顔色をうかがいながら生活することになります。 我慢することの連続になるため、自分の感情や考えを正しくアウトプットしていくことは非常に苦手になっていきます。 何かあれば自分が一歩引く、我慢すればいい、というのがくせになってしまいます。 養育者側だけの問題でなく、生まれつき勘がよく、非常に感受性が高く、相手の思考や考えを推測するのが得意であれば、自然にまわりに気を遣うこともあります。 育てるのに手がかからなかった、というような子どもの中に、このような子が含まれてきます。 我慢することになれ、それが日常になったとしても、0の逆側には100があります。 シンプルに考えて、我慢強い子の裏側には、どうしようもないくらいの100の衝動があることが多いと思います。 それは動的なものであったり、静的なものであったり、分かりにくいこともありますが、とにかく100の感情、衝動がある。 スプリットしているとは、そういうことだと思います。 過剰適応できるのでその場の環境や対人関係にすっと入っていけるが、その裏側では100の感情、衝動が常に存在している、そんな非常にアンバランスな状態となります。 それが扱いきれなくなると、急な衝動性として外にでてきたり、希死念慮がでたり、急に動けなくなったり、調子がくずれすぎたり、することがでてきます。 これは扱いきれないと非常に困ることですが、逆に考えれば他者の思考、感情を推測し、その場の環境にすっと適応する力は、その子が獲得した力でもあると思います。 大変だった子どもにか獲得できない力の一つです。これは大人になった時、特に仕事では役に立ちます。 我慢強さや粘り強さも、仕事では武器になります。 子どものときには分からないことですが、大人になって仕事となると、これらの力は、良い悪いはおいておいて、役に立ちます。 プライベートではコントロールできないと難しいことが多いでしょう。 パートナーがいたとして可適応にしていれば相手は満足するかもしれませんが、いつか急に逆側の感情が襲い掛かってくるでしょう。 それは相手との距離が近ければ近いほど、表にでてくるかもしれません。仕事ではそこを我慢できても、プライベートで感情をコントロールしきれない人が多いのは、このあたりに原因があります。 養育者との関係が整理されていなければ、それに近い存在となったパートナーとの間で、それが再現される可能性は高い。 なんで自分が不安定になるのか分からないと、同じ相手と長く一緒にいることができないでしょう。 これはどの疾患でも、生育歴が悪い子どもは、だいたい当てはまります。 子どものころから、人の顔色、まわりの環境を読み続けていたら、それは得意になります。 辛い環境にいたから後天的に身についた力です。 でもそれは大変だった結果身についたものだから、否定せず、武器にしてほしいと思っています。 そしてそれを伝えるようにしています。 プライベートでの感情や衝動のコントロールは理由をしらないと、扱うことができませんし、相手にもうまく伝わりません。 だから、過去を振り返る作業は大事です。自分がなぜアンバランスな存在なのか、理由が分からないと、地に足がついて生きていけないはずです。 すべてを受け入れることができれば、あきらめもせず、無関反応もせず、他人を責めず、言い訳もせず、自分のいいところは評価し、悪いところは自分の問題だから自分で解決するんだという決意ができるはずです。