2024.04.24ブログ
特に理由がないのに急に気分が沈むことがある、という主訴で来院される方は少なからずいます
特に理由がないのに急に気分が沈むことがある、という主訴で来院される方は少なからずいます
ずっと調子が悪いのではなくて、さっきまで普通だったのに、特にきっかけなく気分が落ち込む、というものです。
予測しにくいのが最大のネックだと思います。
疾患でいうと、境界性パーソナリティ障害、の方だと顕著にこのあたりが現れます。
しかし診断がつかないが、境界性パーソナリティ障害に近い病態の方も、もちろんこれが起こります。
そういう方の方が多いのではないかと思います。
急に気分が落ちると、それがあまりにもひどければ、希死念慮がでることもあるでしょう。
本人も、どうしたらいいか分からない、という感覚のはずです。
それほど長い時間でなかったとしても、死にたい気持ちがふっと沸いてくるのは、怖いものです。
海外では、境界性パーソナリティ障害の治療で、弁証法的認知行動療法というものをやります。
これはテキストを使用し、日本でいうところの、生育歴、家族歴を詳細に調べて、複数人のスタッフ耐性で安全性を高めたうえで、精神分析的、認知行動療法的な治療を混合して行っていく感じです。
人手もかかるので、非常にコストがかかりますが、海外では標準治療となっている国もあります。
日本では保険適応となっていないので、海外バージョンをそのままやることはできません。
エッセンスをうまく取り出しながら、やれる範囲でやっていく、といのが現実的な落としどころです。
そのテキストの中で、希死念慮が出た時に、どうするかというページがあります。
うまいこと気をそらして、その一瞬を逃げ切る、という箇所があり、それは深呼吸したり、冷たい氷をかじったり、暑い風呂にはいったり、運動したり、音楽を聴いたり、とにかく違う感覚を入れて脳をリセットさせるというものです。
何が一番感覚をリセットさせるのか、人それぞれですが、これはそれを探していく作業を平時から行っていくこと自体も大事だと思います。
一瞬の不調をうまく逃げ切るための手段が、多い方がより安全だと思います。
気分の波は、養育者との関係、基本的には幼少期からの母子関係から現在までつながっています。
つまりかなり根深い問題です。
治療といってもすぐに気分の波が改善することはないですし、かなり治療が進んだとしても、時折襲ってくる気持ちの落込みはなくならいかもしれません。
だから、一人でその場でできる対処法は多い方がいい、ということです。
まとめ
特に理由がないのに急に気分が沈むことがある、について解説しました。
BPD様のものから発生する気分の波は、治療に時間がかかります。
その間、なるべく安全に治療を進めるためには、こういう工夫も必要です。
意味がないと極端に考えるのではなく、やれる範囲でやってみるかと、落としどころを見つけ、そしてそれを実生活に取り入れていくこと自体、非常に治療的なのです。