2024.05.06ブログ
今回は、自閉性スペクトラム障害と注意欠如多動性障害(ADHD)の合併について解説します。
今回は、自閉性スペクトラム障害と注意欠如多動性障害(ADHD)の合併について解説します。
ASDとADHDのオーバーラップは細かく見ていけばかなり多いと思います。
片方の診断がつかないレベルまでいれたら、そうとうな割合になるでしょう。
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①ASDとADHDの合併率は?
自閉性スペクトラム障害(ASD)と注意欠如・多動性障害(ADHD)の合併は、臨床上よく見られる現象です。両者は異なる状態ですが、いくつかの共通する症状を持っており、一人の個人に同時に存在することがあります。ASDは、社会的コミュニケーションの障害や反復的な行動のパターンによって特徴づけられ、ADHDは注意力の不足、衝動性、過剰な活動によって特徴づけられます。
ASDとADHDの合併の確率については、研究によって異なる結果が報告されていますが、一般に高い合併率が示されています。
研究と文献に基づくと、自閉性スペクトラム障害(ASD)と注意欠如・多動性障害(ADHD)の合併率は比較的高いと報告されています。いくつかの研究では、ASDの子どもたちの約30%から80%がADHDの症状を示すと報告されています。逆に、ADHDの子どもたちの中でも、ASDの特徴を持つ子どもの割合が高いことが示されています。
②ASDとADHDの合併が多い理由は?
自閉性スペクトラム障害(ASD)と注意欠如・多動性障害(ADHD)の合併が多い理由は、いくつかの要因によって説明されます。これらは互いに独立した状態であるにもかかわらず、類似または重複する症状を有し、共通の神経生物学的および遺伝的根拠を共有する可能性が指摘されています。以下は、ASDとADHDが合併しやすい理由に関連する主な要因です。
(1)共通の遺伝的要因
遺伝的要因: ASDとADHDの両方において、遺伝が大きな役割を果たしていることが研究で示されています。特定の遺伝子変異や遺伝子の組み合わせが、これらの障害の発生に寄与している可能性があります。これらの遺伝的要因が重複している場合、一人の個体が両方の障害を発症するリスクが高まります。
(2)神経生物学的要因
脳の構造と機能: ASDとADHDの両方に関連する脳の特定の領域における構造的および機能的な違いが指摘されています。例えば、前頭葉の機能障害は、ADHDの主要な特徴である衝動制御の問題と関連していますが、ASDにおける社会的コミュニケーションと行動の柔軟性の問題にも関係している可能性があります。
(3)環境要因
環境的影響: 遺伝子だけでなく、妊娠中の母親の生活環境や健康状態、出生後の環境など、環境要因もASDとADHDの発症に影響を及ぼすとされています。これらの環境要因が両方の障害のリスクを高める可能性があります。
(4)認知機能と行動の類似性
認知および行動の特徴: ASDとADHDは、注意力の問題、衝動性、社会的コミュニケーションの難しさなど、いくつかの認知機能と行動の類似点を持ちます。これらの類似した特徴は、一方の障害の診断を受けている個人が、もう一方の障害の特徴も示す可能性を高めます。
これらの要因は、ASDとADHDがしばしば合併する理由を部分的に説明していますが、この複雑な関係を完全に理解するためには、さらに多くの研究が必要です。これらの障害の合併は、診断と治療のアプローチにおいて特別な考慮を必要とします。専門家は、これらの障害を持つ個人が直面する独特な課題を理解し、適切な支援を提供するために、継続的に研究結果に基づいた最新の知識を取り入れています。
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ASDとADHDの合併において、治療上最も重要な点は、ADHD症状は内服により改善可能だということです。
これは当たり前のようですが、非常に重要です。
特にASDと子どもの時に診断されていると、大きくなるにつれてADHD症状が学校生活や仕事で実はじゃまになっているのに、見逃されていたり、治療対象ではないと思われていることがあるからです。
コミュニケーション一つとっても、実際は複雑に構成されています。
不注意があり、同時処理が苦手だから、会話や、会議の時に話が結果としてついていけない、ずれてしまう、という人も多いからです。
これらが不注意症状が原因で発生していたら、内服である程度まで改善可能な可能性がある、ということです。
内服は使い方次第です。
一時的とは言え症状が改善し、失敗体験が減れば、自信はつきますし、獲得した経験、知識は内服をやめても消えてはいきません。
だから私は内服はうまく使いこなせれば、積極的に利用していった方がいいと考えています。
まとめ
今回は、自閉性スペクトラム障害と注意欠如多動性障害(ADHD)の合併について解説しました。
思っている以上に、ASDとADHDは合併しています。
ADHD症状に関しては内服治療可能なので、ASD診断にひっぱられず、見極めていくことが重要です