2024.05.23ブログ
今回は、自殺再企図を防ぐには、家族の支持機能をあげることが重要について解説します
今回は、自殺再企図を防ぐには、家族の支持機能をあげることが重要について解説します
私は東海大学医学部精神科にいる時、児童精神科を専門としながら、病棟業務は救命救急センターリエゾンを行っていました。
東海大学の救命センターは高度救命救急センターだったので、連日自殺企図で搬送されてくる方がたくさんいました。
児童精神科医を救命センターリエゾンに配置して、初期対応から介入していくということを目的にチームは作られていました。
救命センターに入院となるほど重篤な状態になる自殺企図の方の少なくない割合で、精神科にかかったことがなく、病名も診断されていない、人が含まれていました。
そうなると、家族も予測できていないケースが多く、また主治医はいないため、自殺企図後のフォローは受け持ったチームの外来で行うことになります。
救命救急センター病棟は体の治療が終わればすぐに退院となります。その場合、自殺企図に至った原因が解決していなくても自宅に帰ることになるので、再企図リスクを可能な限り下げる必要があります。
精神的な病気が原因であるならその治療を行うということになりますが、病名がつかない、ついたとしてもそれが自殺企図の原因ではない、ケースが一定数存在します。
それらのケースでは、生育歴に問題があることが多く、家族との関係に介入が必要になります。
介入のタイミングは、自殺企図で運ばれてきて、最初に家族と面談する時に行っていました。
それまで動いていなかった本人と家族との間の力動、つまり心のつながりのようなものが、もっとも動きやすい瞬間だからです。
外来であれば少しずつ、生育歴を振り返り、その作業の中で、本人、家族に自然に気が付いていってもらいますが、自殺企図後の介入ではそんな時間もありませんし、再企図防止のためにはなるべく早く介入した方がいいからです。
家族の本人への支持機能をどこまで高めることができるのか、我々のチームを含めてどこまで本人、家族との関係をつめることができるか、それを重視していました。
本人が過去を振り返り、今の自分に腑に落ちるには時間がかかります。
その間は、家族やスタッフチームがその時間を安全に作っていく必要がありました。
外来での治療も、救命センターでやっていたことを、少しずつ時間をかけてやっていくのですが、入院期間が予測できないなかで可能な限り早く治療を進展させていくというのは、自分も若い時でなければ体力的にもできなかっただろうと思います。
精神科医には、キャリアのそれぞれの時期に、人それぞれだと思いますが、やるべきこと、会うべくしてあった人、がいるんじゃないかと思います。
それは精神科医に限らないと思いますが、心を扱う仕事なので、余計そのあたりセンシティブに考えているのかもしれませんが、誰にでもあるんじゃないかと思います。
精神科という外来での出会いも、人と人との出会いの一つになります。
そこに、そのタイミングでいかなければ、人生で会わなかった人達なのですから。
なんらかの病気がなおっていくのは大事ですが、病気の中に今困っていることの答えがないこともあります。
そういうことに気が付くことも、すごい重要なことだと思います。