2025.09.11ブログ
トリンテリックス(ボルチオキセチン)とは?
トリンテリックス(ボルチオキセチン)とは?
— 神奈川県厚木市 児童精神科専門クリニック|きもとメンタルクリニックブログ
トリンテリックスの特徴
トリンテリックス(一般名:ボルチオキセチン)は、2019年に日本でも承認された新しいタイプの抗うつ薬です。
従来のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)とは異なり、「マルチモダル作用機序」を持つ点が大きな特徴です。
つまり、セロトニンの再取り込み阻害作用に加えて、複数のセロトニン受容体に作用することで、神経伝達のバランスをより広く調整できるのです。
他の抗うつ薬と比べて優れている点
① 認知機能への改善効果
従来の抗うつ薬は「気分を改善する」ことが主目的でしたが、トリンテリックスは注意力・記憶力・処理速度などの認知機能の改善効果が臨床試験で示されています。
うつ病では「頭の働きが鈍い」「集中できない」という症状が強く出ることがあり、学業や仕事への影響が大きいため、この効果は特に注目されています。
② 性機能障害が少ない
SSRIやSNRIの副作用でよくあるのが**性機能障害(性欲低下、射精障害など)**です。
トリンテリックスはその発現率が低いと報告されており、長期服用の継続性が高いという利点があります。
③ 体重増加が少ない
三環系抗うつ薬や一部のNaSSA(ミルタザピンなど)では体重増加がよく問題になりますが、トリンテリックスは体重増加がほとんどないとされています。
特に若い患者さんにとって、体型変化が少ないのは安心できるポイントです。
④ 鎮静・眠気が少ない
抗うつ薬の中には強い眠気をもたらすものもありますが、トリンテリックスは日中の眠気が比較的少ないため、学校や仕事に支障をきたしにくいという利点があります。
注意点・デメリットも知っておきましょう
吐き気などの消化器症状が出やすい(特に開始初期)
効果が出るまでには数週間かかるのは他の抗うつ薬と同様
保険適応は「うつ病」に限られる(不安障害などには正式適応なし)
まとめ
トリンテリックスは、
認知機能改善効果
性機能障害や体重増加が少ない
日中の眠気が少なく活動を妨げにくい
といった点で、従来の抗うつ薬よりも優れている部分があります。
うつ病治療では「気分を改善する」ことに加えて、「学校や仕事に戻る力を取り戻す」ことも大切です。
その意味で、トリンテリックスは日常生活の質を重視した治療に有用な選択肢といえるでしょう。