2025.10.09ブログ
小児ADHDが学童期の学習に与える影響について
— 神奈川県厚木市 児童精神科専門クリニック|きもとメンタルクリニックブログ
小児ADHDが学童期の学習に与える影響について
— 神奈川県厚木市 児童精神科専門クリニック|きもとメンタルクリニックブログ
ADHDとは?
ADHD(注意欠如・多動症)は、発達の中で「注意を保つ」「行動をコントロールする」「衝動を抑える」といった力の発達に偏りがみられる神経発達症のひとつです。
主な特徴は、
- 不注意(集中が続かない、ケアレスミスが多い)
- 多動(じっとしていられない、落ち着かない)
- 衝動性(思ったことをすぐ行動に移してしまう)
の3つです。
これらの特徴は成長とともに変化していきますが、学童期(小学生)になると学習面での困りごととして現れやすくなります。
学童期にみられる学習への影響
① 集中力の維持が難しい
授業中に注意が途切れやすく、
- ノートを書き写すのに時間がかかる
- 先生の話を聞き逃してしまう
- 宿題やテストでミスが多い
といったことが起こります。
「理解できない」わけではなく、注意が一時的に外れることで学習効率が下がるのです。
② 作業の段取りが苦手
ADHDの子どもは、物事を順序立てて考える「実行機能(ワーキングメモリ)」が苦手なことがあります。
そのため、
- 宿題を出されたときにどこから手をつけていいか分からない
- 用具をよく忘れる、プリントをなくす
- 一度に複数の指示を出されると混乱する
など、「やる気はあるのにうまく行動に移せない」という困難が見られます。
③ ケアレスミスが多い
計算ミス、問題の読み違い、漢字の書き間違いなど、理解しているのに間違えることが多くなります。
これは注意が細部にまで向きづらいことが関係しています。
④ 集団行動や授業態度の難しさ
- 授業中に立ち歩く
- 話してはいけない場面で発言してしまう
- 他の子の発言をさえぎってしまう
といった行動面の問題が起きやすく、周囲から「わざとやっている」と誤解されることもあります。
本人も「叱られる」「失敗する」経験を重ねるうちに、自信をなくしたり、学校が苦手になることがあります。
⑤ 感情のコントロールや自己評価への影響
集中が途切れる、忘れ物をする、注意される経験が多いと、
- 「どうせ自分はできない」
- 「頑張っても意味がない」
といった否定的な自己イメージを持ってしまうこともあります。
ADHDは学習能力の問題ではなく、脳の働き方の特性であることを理解し、周囲のサポートがとても大切です。
学習を支えるためにできること
🟢 家庭での工夫
- 宿題は短時間ずつ区切って行う(タイマーを活用)
- 一度に多くの指示を出さず、1つずつ明確に伝える
- 忘れ物を防ぐために「チェックリスト」を使う
- できたことを積極的にほめて、成功体験を積ませる
🟢 学校との連携
担任の先生に特性を理解してもらうことで、
- 席の位置(前の方・刺激の少ない場所)
- 提出物のサポート
- テスト時間の配慮
など、環境調整で学びやすくする工夫が可能になります。
🟢 医療・心理的支援
児童精神科では、必要に応じて
- 行動療法・環境調整のアドバイス
- 学習支援やカウンセリング
- お薬の併用(注意力の改善や衝動性の抑制)
などを組み合わせ、お子さまの生活全体を支えるサポートを行います。
まとめ
- ADHDは「集中・段取り・衝動抑制」のバランスに特性がある発達症
- 学童期には「不注意」「忘れ物」「ケアレスミス」「感情面の落ち込み」が学習に影響
- 適切な理解と支援で、学習能力を十分に伸ばすことができる
お子さま一人ひとりの特性に合わせた行動療法・環境調整・学習支援を行っています。
「集中が続かない」「忘れ物が多い」「勉強への意欲が下がっている」など、気になるサインがある場合は、早めのご相談をおすすめします。